書店を取り巻く昨今の環境

コロナ禍でリモートワークなどの普及に伴い、Uber EatsやAmazonのようにお店へ買いに行かずに購入できるサービスが売上を伸ばしています。そんな中、本の売上に関しても紙媒体から気軽に購入できる電子書籍へ移行しており、本を扱う書店も厳しい状況になっているといえます。2000年には全国に約2.1万店あった書店は、2020年には1.1万店と実に20年で約半数になってるのが現状です。

厳しい状況に見えますが、その裏側で実は新しいタイプの書店が登場していることをご存じでしょうか。その代表格なのが今回のテーマでもあるシェア書店なのです。

そもそも本を読む・書店へ行くメリットとは

日本人の「活字離れ」が叫ばれる一方で、私たちはスマートフォンやインターネットなどからは毎日たくさんの情報を得ています。そんな中で、「読書で身につくスキルとは何か?」ということを改めて考えてみると、読書にはこのようなメリットがあります。

    メリット

  • 漢字や文法に詳しくなる。
  • 本の内容を疑似体験することで想像力が鍛えられる。
  • 関心や興味の幅が広がり新しい世界へ踏み出すきっかけになる。
  • 新たな発見を得ることで視野が広がる。
  • 考える力が身につく。
  • 自分の中に蓄積された知識がアイディアとしても活かされる。

上記のように「好奇心を持って情報を収集し、そこから自身の意見を形成する」ということは、読書することで養われる“ならでは”のメリットですね。

書店へ行くメリットも関心や興味の幅が広がるということです。皆さんは「目的の本棚の隣の棚をたまたま見ると面白いタイトルがあり、思わず手に取ってしまった」という経験をしたことはありませんか?歴史小説を探しに行ったのに科学解説本を手に取ってしまった、スポーツ雑誌を見に行ったのに編み物雑誌を見てしまったなどなど。思いがけず、新たな興味や知識、経験を得るきっかけとなることがあります。

このように、本屋へ行き本を読むことには、電子書籍とはまた違った大きなメリットがあります。

シェア書店とは何か?

シェア書店の先駆けとなったのが、東京都の吉祥寺にある「ブックマンション」。70人以上もの棚主が常時借りている人気のシェア書店です。特に宣伝をしているわけではなく、Twitterなどを通じてお店を知り来店する方が多いそうです。

このブックマンションの成功をはじめとして、現在もシェア書店が増えています。その大きな特長を紹介します。

①書店の運営を皆で共有(シェア)する

通常の書店と違いシェア書店では棚借りをしている複数の店主が存在します。上記のブックマンションの例を引き合いに出すと、書店自体のオーナーが間借りしたい方を募集、応募があった方に対して棚を貸し出すことで成立しています。

シェア書店の運営形式にもよりますが、多くの書店では自分の棚の管理だけでなく店番も交代制で行っているそうです。そのため、間借りしている棚の棚主としてだけでなく、店長やオーナーの疑似体験ができます。

自身の棚に陳列する本に関しては、個人で自由に選ぶケースが多いので、自分の世界観を棚いっぱいに広げる楽しみがありそうです。

②シェア書店の仕組み

シェア書店では棚の一部分の場所代を支払い、借ります。書店ですので、紙媒体の書籍を並べることがルールとしてある場所がほとんどですが、そこに並べる商品は棚の借り手の自由です。

例えば
・自分が読み終わった中古本
・オススメしたい新品本
・子どもが昔読んでいた絵本
などさまざまで、まさに自分だけの世界を作り上げることができます。つまり棚の借り手は小さなお店の店主になれるのです。

棚主は、借りている場所のオーナーに対して棚の利用料を支払います。合わせて、本の売上の一部を支払うケースが多いです。

場所を貸しているオーナー側としては、仮に本が売れなくても、月々の収益は棚料というサブスクリプション契約で入ってくるので、一定の収益が見込めることになります。

なるほど、継続して書店を運営していける形態がとられている…と。シェア書店はまさに新しいカタチの書店と言えますね。

③本好き同士の独自のコミュニティを築くことができる

シェア書店は本を好きな人が集まる場所なので、同じ好みの人との輪を広げることができます。書店によっては棚主が主催のワークショップを開催していたり、地域の人たちや本好きの人との交流の場を設けています。

この、本好き同士の独自のコミュニティを築けるというのも、オンラインでの書籍の購入では味わえないリアルな書店の特長ですね!

新たな価値への気づき~代表的な書店を紹介~

新しいカタチの書店であるシェア書店ですが、その魅力は一体どこにあるのでしょうか?

それは、何といっても「毎月の棚代だけで書店を営むことができる」ことでしょう。低コストで自分だけの場所を確保できます。実際、書店としての利益は大きく出るかといえばそうではありません。棚代と本の売上の一部を場所のオーナーへ支払うので、手元に残る分は大きくないでしょう。しかし自分が気に入っている本を紹介し、その価値観に共感する人とつながれることはお金以上の価値があるのではないでしょうか。

先ほどお伝えしたコミュニティとしての機能もシェア書店にはあります。リアルな書店だからこそ得られるアナログな人間関係は、運営側だけでなく利用者にとっても貴重な財産になるでしょう。

代表的な3つの書店をご紹介

渋谷○○書店(シブヤ・マルマル・ショテン)

一つ目が渋谷の商業施設渋谷ヒカリエにある「渋谷○○書店」です。

30坪弱の店舗スペースに何と130以上の本棚があります。
書店名の“◯◯”には、だれでも本屋さんになることができるというメッセージが込められているそうです。

糸島の顔がみえる本屋さん

二つ目が福岡県糸島市の商店街にある「糸島の顔がみえる本屋さん」です。

こちらは約100枠の本棚にそれぞれ書棚を借りて出店したオーナーがいます。オーナーそれぞれの個性が各棚に出るので、顔の見える本屋さんという名前をつけているようです。このシェア書店ですが、東京から糸島へ移住された方が企画をされました。それもあってか本棚も全国各地からのオーナーがいるようで、地域交流にも一役買っているそうです。

みつばち古書部

最後にご紹介するのが大阪市にある「みつばち古書部」です。

こちらも約100の棚があり、それぞれの棚には屋号がつけられています。まるで本当に本屋の主人になった気分になりますね。店番は交代制で棚のオーナーが行っており、担当の日にはイベントを企画したり雑貨などを販売するのもOKです。自分の色をより出すことができそうですね。

これからのシェア書店を予測

とても魅力的なシェア書店ですが、これからシェア書店が増えることによってどのような影響があるのでしょうか。未来像を考えてみました。

① 小さな出版社が直接提携するシェア書店の出現

従来の書店のビジネスモデルとして、大手出版社と書店の間に取次業者が存在します。ですが、今後書店が自分たちならではの特長をアピールするために、出版社と直接取引していくケースが増えていくかもしれません。その中で、あまりなじみのない小さな出版社が活躍する可能性もあります。

特色のある本がシェア書店に並び、見るだけでも楽しい場所が増えていくと素敵ですね!

② 飲食店やコワーキングスペースなど異業種とのコラボ

先ほどお伝えしたとおり、シェア書店には独自のコミュニティが作れるという特長があります。棚主の人脈や、本好きな近隣の方などさまざまな人とつながりを持つことができるでしょう。その特長を活かして、例えば飲食店やコワーキングスペースなどの施設を併設する書店が増えてくるかもしれません。

本をじっくり読む、あるいは選ぶという点から書店でゆっくりしたいというニーズはあるかと思います。カフェが併設された本屋は現在でもありますが、同じように飲食店や仕事場としてのコワーキングスペースとタイアップすることでより場所がにぎわうことになるでしょう。

③ 地域交流の中心になる

前述の「糸島の顔がみえる本屋さん」や、「みつばち古書部」は商店街の一角に書店を構えています。書店には棚主それぞれの雰囲気に合った人たちが訪れることでしょう。例えば年齢や性別、職業などの垣根をこえた人たちが集まると考えられます。地域交流の中心の場所をシェア書店が担っていく未来があるのではないでしょうか。

ふむふむ。人と人との交流が少なくなっている昨今です。シェア書店の役割はより大切になってくるかもしれませんね。

「行く」「営む」ことで暮らしを豊かに

今回はシェア書店について現状と未来についてお伝えしてきました。

今後も、それぞれの特色を活かした面白いシェア書店が出てくることでしょう。シェア書店は棚主の個性が大きく反映されるので、一つとして同じ書店はありません。単に本を買いにいくという行為だけでなく、まるでアミューズメントパークに行くようなワクワク感を持って本に出会いに行くことができます。

これを機にスマートフォンで本を読むことに慣れた方も、街の本屋に行ってみてはどうでしょうか。普段出会えないような発見と感動があるかもしれません。

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