アップサイクルブランドとは?
アップサイクルとは、廃棄物やいらなくなったものに手を加え、アップグレードして再利用することです。
このプロセスを利用して、サステナブルな製品を展開するブランドが「アップサイクルブランド」と呼ばれています。例えば、服の生産時に廃棄されるはぎれや糸をまとめて、別の衣類や小物として作り変えるといったケースです。
素材の特徴を活用して新しいデザインや製品として展開することで、元となったアイテムにはなかった新しい価値を見出せることから、国内外のさまざまなジャンルの企業から注目されています。
実は、日本国内ではアップサイクルの考え方は古くから存在しています。「金継ぎ」という日本の伝統的な食器の修繕法は、欠けたり割れたりした食器の割れ目に金粉や漆を塗って繋げることで、新しい食器に生まれ変わらせる技術です。
廃棄されるはずの食器に「割れた食器だからこそできる美しい模様」という付加価値を付けていることから、アップサイクルの一例といえるでしょう。
アップサイクルとリサイクル・リメイクの違い
消費者や企業を問わず注目されているアップサイクルブランドですが、似た考え方として「リサイクル」と「リメイク」があります。ここからは、アップサイクル・リサイクル・リメイクの違いについて解説していきます。
資源に戻すか否か
アップサイクルとリサイクルの違いは「資源に戻すか否か」という点です。リサイクルの考え方では、新しいアイテムとして再利用する前に樹脂や繊維などの別の資源に戻す必要があります。例えば、新聞紙を繊維に加工し、再生コピー用紙を作るといったケースです。
一方アップサイクルは、リサイクルのように一度資源に加工し直さず、不用品に使われている素材や特徴をそのまま活かして再利用するのが特徴です。
価値を重要視するか否か
アップサイクルとリメイクは「価値を重視するか否か」という点が大きな違いといえるでしょう。不要になったものをベースに手を加えるというプロセス自体は同じですが、リメイクは再利用後のアイテムの価値は問われません。
例えば、不要になった服を使う場合、染め直したり一部分をポーチや雑巾などの小物にしたりする方法がリメイクであり、アップサイクルのように完全な新商品として作り直すものではありません。
アップサイクルの場合、廃棄物や不用品を服や小物・家具など、元となる材料よりもさらに価値の高いアイテムとして展開します。あくまで付加価値を付けてアップグレードすることが、アップサイクルでは重視されるという考え方です。
アップサイクルブランド製品のメリット
SDGsの広まりにより、アップサイクルブランドをはじめとしたサステナブルな製品づくりが注目されていますが、アップサイクルブランド製品にはどのようなメリットがあるのでしょうか?ここからは、アップサイクルブランド製品のメリットをご紹介します。
環境負荷を抑えられる
アップサイクルブランドの製品は、生産時や廃棄時などにおける環境負荷を抑えられるというメリットもあります。
毎日多くの製品が生産・消費される現代では、不要になった製品の処分にも多くのエネルギーを使用しており、焼却や埋め立てによる環境への負荷が問題視されています。
アップサイクルブランドの製品は、廃棄物や不要になったものを活用してそれぞれの素材の特徴を活かせるよう、可能な限りそのままの状態で加工を行います。そのため、廃棄量の削減やリサイクル時の再加工にかかる環境負荷を抑えられると考えられています。
一例として「全世界で生産された服のおよそ60%が1年以内に処分されている」というアパレル業界の課題に対する、アパレルブランド「FROMSTOCK(フロムストック)」の取り組みが挙げられるでしょう。
FROMSTOCKは、シンプルかつロスが少ない黒染めの技術を採用したことで、キズや汚れが付いた部分すらも含めて新しいデザインのサステナブルな服として展開し、服の廃棄量の削減を実現しています。
生産に必要なコストを抑えられる
生産に必要なコストを抑えられるのは、アップサイクルブランド製品ならではのメリットです。例えば新しい服を一から作る場合、原材料の仕入れや加工に必要な工場・人員の調達、加工に必要なエネルギーなどさまざまなコストがかかります。
アップサイクルの場合、一般的に廃棄物や不要なものを原材料にするため、仕入れのコストが安い傾向にあります。また、原材料をそのまま活用するので加工にかかるコストを抑えやすく、生産にかかるトータルコストを抑えながら新しい製品を展開できます。
一例として、イギリスのレスター大学で行われた廃棄ペットボトルを使った義肢の製作プロジェクトは、義肢を作るために必要な費用は業界平均で5,000ポンド(約65万円)とされていたのに対し、原材料に廃棄ペットボトル由来のポリエステル糸を活用したことで10ポンド(約1,300円)にまで抑えられたとされています。
ビジネスの可能性が広がる
企業側にとってアップサイクルブランド製品は、ビジネスの新たな可能性を広げるカギとなります。
例えば、食品加工で発生した廃棄物を染料や香料などにし、香水やペンのインクなどとして販売するといったように、同じ廃棄物でも企業ごとのコンセプトによって、さまざまな製品へとアップグレードできる可能性を秘めています。
一例として、菓子製造メーカーの「カンロ株式会社」が規格外という理由で販売できないキャンディを、アロマスプレーや石けんなどの日用品へアップグレードするという取り組みがあります。
ベースとなる商品によって見た目や風合いなどが変化する場合もあるため、いわゆる「一点もの」の商品になる点でも特別感を出せるでしょう。
アップサイクルブランドは、これまで着手していなかった新しい事業やプロジェクトの開拓につながる可能性を秘めているといえるでしょう。
日本で買えるアップサイクルブランド9選(2024年7月現在)
分野を問わず、国内外のさまざまな企業がアップサイクルブランドを展開しています。アップサイクルブランドの商品を使うことで、消費者も環境にやさしい暮らしを実現できるでしょう。ここからは、日本で買えるアップサイクルブランドについてご紹介します。
【洋服】RYE TENDER(ライテンダー)
「RYE TENDER」は、全国各地を回るポップアップイベントを展開しているアパレルブランドです。生産過程で出る糸や生地の余った部分を原材料とした、ユニセックスデザインの衣服を展開しています。
使用している余り原料のなかには希少性が高いものもあり、補強を加えることで耐久性が高くて価値のある商品を実現しているのが魅力です。
【洋服】CO×CO(ココ)
日本発のサステナブルアパレルブランドの「CO×CO」は、アパレル製品の製造時に発生する生地や糸の余った部分、廃棄予定の古着などを原料にした衣服を展開しています。
「廃棄衣料問題」をテーマとしたグッズのなかには、服のデザインのポイントでもあるタグのQRコードを読み込むと、商品の生産過程やストーリーが見られるといった生産過程が分かる仕掛けが施されているものもある点が魅力です。
落ち着いたデザインの商品の数々は、シーンを問わず使いやすいでしょう。
【ファッション小物】カエルデザイン
クリエイティブユニットから端を発した「カエルデザイン」は、海洋プラスチックやフラワーロスの課題に注目したサステナブルな商品を展開するブランドです。
海岸で回収した海洋プラスチックをイヤリングやヘアアクセサリーなどへアップグレードすることで、海や川のクリーンアップに寄与しています。
また、ブランドが展開しているアクセサリーのなかには、折れたりしおれたりして生花店では販売できなくなった廃棄花による商品も。
素材特有の質感や色味を活かしたアクセサリーは、美しいだけでなく海と陸の環境保全も考えられています。
【ファッション小物】LOVST TOKYO(ラヴィストトーキョー)
「LOVST TOKYO」は、廃棄予定のりんごから生まれたアップルレザー「aplena(アプレナ)」のグッズを展開しているブランドです。
レザーには廃棄りんごの絞りかすを樹脂と合成したものを使用しています。従来のヴィーガンレザーに比べて石油由来の原料の使用を抑えられているため、より環境にやさしい製品づくりを実現しています。
【ファッション小物】SARARTH(サラース)
ピュアシルバージュエリーブランドの「SARARTH」では、独自開発の「高硬度PURE SILVER 999」を採用しているのが特徴です。
高硬度PURE SILVER 999は再生されたシルバー素材から作られており(※一部パーツを除く)、貴金属の採掘による鉱山の環境破壊へ配慮しています。
売上の一部は、公益財団法人日本自然保護協会との連携による「赤谷プロジェクト」へ寄付され、天然林の復元やイヌワシなどの絶滅危惧種の大型猛禽類の保護活動に活用される点も魅力です。
他にも、加工されたものの、さまざまな理由から商品として販売されずにいたジュエリーのジェム部分を、新しい姿のアクセサリーへアップグレードしています。それぞれのジェムが持つ個性的な色味を活かした希少性の高いジュエリーは、アップサイクル製品ならではの魅力です。
【ファッション小物】octangle(オクタングル)
「octangle」は、2022年に日本で誕生したアップサイクルブランドです。ビニール傘を廃棄するときの環境負荷を考え、使えなくなったビニール傘を回収・洗浄・分解し、独自素材として採用したバッグやサコッシュなどの小物を販売しています。
ベースがビニール傘であるため水や汚れに強く、軽量性と耐久性を両立させているのが魅力です。
【家具】東京コルク
「東京コルク」は、廃棄されるワインなどのコルク栓を回収し、オリジナル商品の開発・販売を行う「東京コルクプロジェクト」を実施しているブランドです。
天然コルクならではの、色味や質感を活かしたクッションやタイルなどのインテリアは、さまざまな店舗やスタジオにも提供されています。
【家具】tumugu upcycle furniture(ツムグアップサイクルファニチャー)
「tumugu upcycle furniture」は、アップサイクルインテリアを集めたセレクトショップ「upcycle interior(アップサイクルインテリア)」のオリジナルブランドです。
学校の備品を家具にアップサイクルする活動を実施しており、古い楽器を使ったテーブルやスタンドライトをはじめ、個性的な家具を販売しています。
オーダー製作が可能なグッズもあり、自分が使わなくなった楽器で世界にひとつのオリジナル家具を作れるところも注目されています。
【食品】GOOD CACAO(グッドカカオ)
「GOOD CACAO」では、カカオ豆をローストする際に廃棄される種皮(=カカオハスク)を活用し、カレーやお茶、せんべいなどを販売しています。
カカオハスクが持つ新しい価値を考えつつ、さまざまな食品とカカオが組み合わさることで違った味わいを楽しめる点が魅力です。
環境にやさしいアップサイクルブランドを利用してみませんか?
アップサイクルブランドは、物や素材が持つ可能性を広げるとともに、サステナブルな製品を通して環境にやさしい暮らしを消費者に提供してくれるでしょう。今回ご紹介したブランドも参考にしながら、ぜひアップサイクルブランドを利用してみてください。
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