まずは陶芸に使う窯の種類をチェック

陶芸の窯のレンタルサービスを利用する際には、釜の種類を理解しておく必要があります。主な窯の種類は「電気窯」「灯油窯」「ガス窯」「薪窯」の4種類です。それぞれの窯の特徴について解説します。

電気窯

電気窯は、炉内に電熱線(ヒーター線)が張り巡らされており、電流が通ることによって電熱線を発熱させ、輻射熱(放射熱)で焼成する仕組みです。

電源は、100Vの家庭用コンセントでも使用できるタイプから、200Vの専用の電気配線が必要な中型・大型までさまざまなサイズのものまであります。ほとんどの機種は温度制御が全自動マイコン付きになっており、操作が簡単です。

炎を使わず比較的音が静かで、ニオイや煙もなく設置場所を選ばないため、多くのレンタルサービスで取り入れられています。初心者でも扱いやすく、酸化や還元なども思いのままに行いやすいのが特徴です。

灯油窯

灯油窯は、炊き口から送風機(ファン)で炎を送り込み、灯油の供給量と送風機の風力により温度を制御して焼成します。

窯の構造は、「倒炎式」「半倒炎式」「直炎式」の3種類です。また、還元焼成の際に煙が発生しないようにした無煙タイプや、薪の投入口付きで薪とバーナーの併用が可能な穴窯タイプなどもあります。

他の窯と比較すると、焼成を均一に行うのは難しい傾向にありますが、一つひとつ違った趣のある作品に仕上がることから、多くの陶芸家に選ばれている種類の窯です。近年では火の回りを効率化させたタイプも登場しており、上下の温度差を少なくしている窯もあります。

ガス窯

ガス窯の焼成には、自然燃焼式と強制燃焼式があります。自然燃焼式はガスが出るときの勢いを利用し、焚き口から空気を取り込み燃える仕組みです。強制燃焼式は、焚き口から炎を送り込んでガス圧と空気量を調整することにより、温度を制御する仕組みになっています。

ガス窯の構造は、灯油窯と同様に「倒炎式」「半倒炎式」「直炎式」があり、燃料はプロパンガスまたは都市ガスで、全自動制御のタイプもあります。

燃料効率がよいため還元焼成の際に煙が比較的少なく、低騒音であることが魅力です。また、炎がきれいで発熱量が高く、酸化炎や還元炎の操作が簡単で作品の彩りがよいという特徴もあります。

薪窯

薪窯とは、その名の通り薪を燃焼させて焼成する仕組みの窯のことです。

薪木の種類は豊富ですが、特に松は発熱量が高く比較的調達しやすいことや、自然降灰釉が起こりやすいなどの理由で広く使用されています。陶磁器産地によって「登り窯」や「穴窯」、「蛇窯」など種類は多種多様です。

窯焚きに数日かかりますが、火前・火裏・熾(薪の燃えさし)によってもさまざまな表情を生み出し、他にはない魅力的な味わいの作品と出会えるといった特徴もあります。

陶芸の窯をレンタルするメリット

ここでは、陶芸の窯をレンタルすることによってどのようなメリットがあるのかをご紹介します。

気軽に本格的な焼成ができる

基本的に焼成する際は、陶芸教室に通ったり工房に体験の申し込みをしたりして、作った作品を焼成してもらうという手順を踏まなければなりません。

一方、陶芸の窯のレンタルサービスを利用すれば、好きなときに自宅で作品を作り、自分の都合に合わせて焼成の予約ができます。陶芸教室や工房の体験に申し込む手間やスケジュール調整などが不要なため、より気軽に陶芸が楽しめるでしょう。

メンテナンスをする必要がない

陶芸の窯のレンタスサービスは、自分で窯のメンテナンスをする必要がありません。

窯は繰り返し使用しているうちに徐々に劣化していくため、定期的なメンテナンスが必要です。特に電気窯はヒーターを熱源にしているので、使用回数にもよりますが一定期間を過ぎるとコイル交換が必要になります。

レンタルサービスなら窯の所有者側が行うため、メンテナンスの費用も手間もかかりません。

窯を置くスペースが必要ない

陶芸の窯は大きく保管スペースを取りますが、レンタルなら陶芸の窯を貸している場所に出向いて焼成を行うため、自宅に設置する必要がありません。

陶芸の窯を置くスペースが自宅にない場合や、使用しないときは邪魔になるといった購入する際のデメリットもなくなります。

初期費用を抑えられる

最大のメリットとして、陶芸の窯をレンタルすれば初期費用を大幅に抑えられます。

一般的に新しく窯を購入した場合、商品代金と搬入設置費がかかります。商品代金は、窯の種類によって110万円程度のものから400万円を超えるものまで幅広くあり、搬入設置費は設置する場所によって異なりますが、7~30万円程度かかることもあるので大きな出費になるでしょう。

また、窯の種類によっては電気工事の費用が必要になる場合もあります。レンタルなら焼成する際の費用のみで、素焼きなら1回3,000円~5,000円程度、本焼きは1回5,000円~15,000円程度で済むため、出費を大きく抑えられるのがポイントです。

陶芸の窯のおすすめレンタルサービス5選(2024年8月現在)

ここからは、陶芸の窯のおすすめレンタルサービスを5つご紹介します。それぞれの工房や施設についての特徴を解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

陶芸の森

滋賀県立「陶芸の森」は、陶芸館・信楽産業展示館・創作研究館・広場の4つのエリアで構成されています。その中で工芸品の展示だけでなく、陶芸家の指導を受けながら作品を製作できる講座や窯の貸し出しを行っているのが特徴です。

電気窯やガス窯、穴窯、登り窯などがあり、素焼き・本焼き、窯の種類や使用時間などの希望を電話で予約し、使用料を支払うことで施設を利用できます。また、滋賀県内在住の方は県外の方の半額で利用可能です。

窯の高さや奥行きなどは公式ホームページに詳しく記載されているので、チェックしてみてください。

陶芸工房ガルボ

「陶芸工房ガルボ」は、初心者から上級者まで、自由に作りたいものを作れるおすすめのレンタル陶芸工房です。電動ろくろの設備、粘土や釉薬など材料はすべて自由に使用でき、焼成後の作品の重量で精算されます。

素焼きと本焼成に対応した灯油窯を貸し出しており、温度管理や窯入れ、窯出しは自分で行うのが特徴です。

窯の使用料に加え、使った材料の費用はかかりますが、自分で粘土や釉薬などの道具を持ち込んでも構いません。また、自宅で作った作品を持ち込んで焼成のみを行うことも可能です。

P&A(ピーアンドエー)

「P&A」は、自宅で作った作品を持ち込んで、焼成だけお願いしたいという方におすすめのレンタルサービスです。素焼きや上絵、本焼きを行っており、使用料を支払うことでスタッフが窯詰めや焼成、窯出しまですべて行ってくれます。

空きがあれば電気窯を貸し切りで利用できるので、好みの温度調整をして焼けるのも特徴のひとつです。基本的に2週間前に予約し、持ち込んだ日から1週間程度で完成しますが、焼成希望を指定すれば最短3日で受け取れる場合もあります。

陶芸かしこ窯

「陶芸かしこ窯」は、幅515×奥行465×高さ605mmの電気窯で素焼きや本焼き、釉薬無しの本焼きである焼き締めができるレンタルサービスです。マイコン操作によりスイッチひとつで焼成でき、窯出し予約日に作品を取りにいきます。

店長に焼成をお願いする際は郵送でも受け付けていますが、破損の補償がないため出向いて直接受け渡しすることが推奨されています。

陶芸teru工房

東京世田谷区にある「陶芸teru工房」は、工芸品を飾るギャラリー付きの陶芸工房です。

窯だけ借りたい方のために、幅400×奥行400×高さ320mmと幅650×奥行450×高さ520mmの2つの電気窯を貸し出しています。東京都内の工房なので、アクセスもよく気軽に利用できるでしょう。

現在は、素焼きや本焼きは行っておらず酸化焼成のみです。窯が大きいほうが作品を入れる容量が増えるため、それにともない使用料も高くなります。

陶芸の窯のレンタルサービスを利用する際の注意点

最後に、陶芸の窯のレンタルサービスを利用する際に注意しておきたいことを3つご紹介します。窯のレンタルを検討している方は、事前にチェックしておきましょう。

焼成温度や設定を自分で行うケースがある

陶芸の窯のレンタルサービスは、自分で作った作品を持ち込むと窯入れ・焼成・窯出しなどを工房側が行ってくれるサービスと、最初から最後まで自分で全て行うサービスがあります。

陶芸の窯を使ったことがない場合は、焼成温度や設定などわからないこともあるでしょう。レンタルサービスによっては、陶芸の経験がない方への貸し出しを行っていない場合もあります。

レンタルサービスの注意事項をチェックして、経験の有無や焼成を自分で行うか否かを確かめ、自分に合ったサービスを選んでください。

焼成中に陶器が破損する場合もある

焼成中の陶器は、残留気泡による破裂や釉薬の流れ過ぎによる破損が起こる可能性があります。陶器が破損した場合の補償はないため、なるべく破裂や破損が起こらないような対策を事前にする必要があるでしょう。

流れやすい釉薬を使用する場合は、事前に連絡すると陶板の準備をお願いされることもあります。大切な作品をきれいに仕上げるためにも、しっかり下調べしておくことが大切です。

窯が破損した場合は修理費を請求される可能性がある

窯のレンタルサービスで焼成をする際には、陶器の破裂や破損が起こることがあります。陶器の破裂や破損が原因で窯が破損したり、設備に故障が起こったりした場合は修理費を請求される可能性があります。

心配な方は、スタッフが焼成や設定を行ってくれたり、お手伝いしてくれたりするレンタルサービスを選ぶのがよいでしょう。

陶芸の窯のレンタルサービスで本格的な作品を作ろう

陶芸の窯のレンタルサービスを利用すれば、家庭用窯ではできない高温で本格的な焼成ができます。

釉薬を使用した焼成は質感や色味が変化し、魅力的な作品に仕上がるでしょう。ぜひ自分に合った窯や工房を見つけて、レンタルサービスを利用してみてください。

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