サーキュラーファッションとは?
サーキュラーファッションとは、循環型経済を意味する「サーキュラーエコノミー」というシステムをアパレル産業へ応用した活動です。
「サステナブルファッション」とも呼ばれ、一般的には衣服の生産・消費・廃棄のそれぞれの過程で、再利用できるようにすることを指します。
例えば生産時の場合だと、服の原材料や製造に必要なエネルギーとして環境への負担が少ない素材を取り入れたり、廃棄予定の衣類や製造時に出たはぎれなどを活用して新たな衣類を作ったりといった方法があげられます。
2024年1月現在、衣服の供給の90%以上を海外輸入に頼っている日本では、衣服の消費過程における環境負荷が見えにくい傾向にあります。
しかし、昨今のSDGsの広がりや、2020年度から開始された環境省の「ファッションと環境に関する調査」によるアパレル産業が抱える環境問題の明確化により、企業・消費者を問わず環境負荷を考慮したファッションの取り組みが実施されています。
サーキュラーファッションが注目される理由
アパレル産業が抱えるさまざまな課題を解消し、持続可能な社会や経済に寄与できるとされているサーキュラーファッションですが、具体的にどのような点で注目されているのでしょうか?
ここからは、サーキュラーファッションが社会的に注目される理由について解説します。
衣類の生産時にかかる環境への負荷削減
衣服の生産時にかかる環境負荷の削減につながる点が、サーキュラーファッションが注目される主な理由です。一般的に衣服は、原材料の調達から繊維の製作・染色・裁断や縫製・輸送といったさまざまなプロセスを経て作られます。
各プロセスでは大量のCO2が排出されるとともに、原材料の生産時や染色時などには化学物質や化学肥料も使われることもあります。さまざまな汚染物質によって土壌や水質が汚染されてしまうことで、環境に大きな負荷をかけてしまうことが問題視されています。
サーキュラーファッションでは、原材料の調達から繊維や衣服の生産までのプロセスにおいて環境負荷が少ない方法を活用することで、生産時の環境負荷を軽減できるでしょう。
ファストファッションの流行による廃棄量の増加を抑える
ファストファッションの流行に伴う衣類の廃棄量の増加を抑える手段になるという点も、サーキュラーファッションが注目される理由です。
ファストファッションとは、最新のトレンドやデザインを取り入れた低価格商品とその販売メーカーを指します。短いサイクルで大量のアイテムが生産できる反面、トレンドデザインの変化によって大量の衣服が廃棄されてしまうという点が大きな課題です。
環境省が実施した令和2年度の「ファッションと環境に関する調査業務」によると、2020年に国内で新しく生産された衣類約81.9万トンのうち、78.7万トンほどが事業省や家庭から手放されると推計しました。
このうち、リサイクルやリユースなどによって再利用される衣類は35.2%ほどで、残りの64.8%はそのまま廃棄されることが予測されています。廃棄予定の衣服が焼却や埋め立てによって処分されることでも、空気や土壌の汚染につながります。
サーキュラーエコノミーをベースとした取り組みであるサーキュラーファッションは、1枚の衣服を再利用することで廃棄量を削減したり、サステナブルな資源を使うことで処分時の環境負荷を抑えたりなどの効果が期待できるでしょう。
衣類の低価格化による労働者への負担の増加を抑える
ファストファッションを中心に衣服の低価格化が進む現代社会において、サーキュラーファッションは労働者への負担軽減につながる可能性があるとしても注目されています。
ファストファッションブランドは「低価格・大量生産」という性質上、生産拠点地を発展途上国を中心とした場所に置いています。
低賃金・長時間労働に加えて、なかには劣悪な労働環境で生産を行っていることもあり、特に2013年に発生したバングラデシュのラナ・プラザ崩落事故では、ファッション産業の過酷な労働環境が問題視されました。
サーキュラーファッションでは地球環境への配慮だけでなく、労働環境の透明化も重視な項目です。「GRS(※1)」や「OCS(※2)」などといった、アイテムの加工や流通過程のチェックをクリアした企業やブランドにのみ付与される「国際認証」も存在しているため、企業側へ労働環境の改善を促す効果も期待できるでしょう。
※1 GRS(Global Recycle Standard):リサイクルを50%以上含む繊維製品・繊維原料等に付与できる国際的な自主規格。加工・製造時の社会的・環境的側面、品質、法令を遵守しているかどうかチェックされる。
※2 OCS(Organic Content Standard):認められた国家有機基準に認定された農場で生産された材料の加工・流通過程の管理検証を提供する国際的な自主規格。オーガニック認証材の工程管理の要件を満たしているかを基準とし、認証材を5%以上含む製品または95%以上含む製品に適用される。
サーキュラーファッションに取り組んでいる企業・ブランド一覧(2024年8月現在)
環境にやさしい社会や経済の実現に向けて、国内外の有名企業をはじめさまざまなブランドがサーキュラーファッションの活動に取り組んでいます。ここからは、サーキュラーファッションに取り組んでいる企業やブランドをご紹介します。
H&M(エイチアンドエム)
ファストファッションの有名ブランドといえる「H&M」では、着用後も再利用できる「Circular Design Story Collection(サーキュラーデザインストーリーコレクション)」をはじめ、サーキュラーエコノミーを見据えたアイテムを販売しています。
このコレクションで装飾を取り付ける際に使う縫い糸は、海岸で回収されたペットボトルを原材料とする繊維を使用しています。
また、革素材の代わりにワイン製造時に廃棄されるぶどうの皮や茎を使用したヴィーガン素材を活用するなど、環境にやさしいサステナブルな原料を取り入れているのが魅力です。
BRING(ブリング)
「BRING」は、サーキュラーエコノミーの考え方をブランドコンセプトに取り入れているファッションブランドです。
使わなくなった服を回収し、自社工場の独自技術によって糸・生地・服として再生させることで、いつまでも使い続けられるアイテムづくりを行っています。
環境にやさしいアイテムの販売だけでなく、古着の回収に力を入れている点も特徴です。購入時にはミツバチマークの古着回収用封筒が付属したり、ショッピングモールで服の回収イベントが開催されたりなど、衣服の廃棄量の削減につながるさまざまな活動を行っています。
PIZZA DAY(ピザ・デイ)
「PIZZA DAY」では、ウール素材を使ったファッションアイテムを販売しています。
サーキュラーエコノミーの取り組みとして、寿命を終えた服や縫製の過程で生じた余分な生地をぶどう畑で使われる肥料として活用するプロセスを採用しています。廃棄時の環境への負荷が少ない、天然素材のウールならではの活動といえるでしょう。
airCloset(エアークローゼット)
「airCloset」は、女性向けのサブスクリプション型ファッションレンタルサービスです。社内で検品・メンテナンスした衣服を利用者同士でシェアすることで、衣服を廃棄することなくサステナブルに楽しめるシステムを取り入れています。
レンタル品であるため、多彩なブランドのアイテムを気軽に試せるのも魅力です。衣服を買ったり保管したりする必要がなくなるため、家庭での衣服の廃棄量の削減につながるでしょう。
ZOZOUSED(ゾゾユーズド)
「ZOZOUSED」は、ZOZOTOWN(ゾゾタウン)のサイト内で古着の販売を行っているサービスです。
ZOZOTOWNで購入して使わなくなった衣服を下取りする「買い替え割」により、不要な衣服を廃棄することなく循環する仕組みになっているのが特徴です。
他にも、過去に期間限定でオープンしていたポップアップストアでは、古着の回収に協力することでもらえるクーポンを配布していました。消費者が買い物を楽しみながらサーキュラーファッションを体験できる仕組みづくりに取り組んでいます。
身近なサーキュラーファッションの取り組み例
循環型経済の一環として注目されるサーキュラーファッションですが、企業だけでなく消費者も簡単な方法でサーキュラーファッションを体験できます。ここからは、身近なサーキュラーファッションの取り組み例についてご紹介します。
古着・おさがり
実は、古着やおさがりの服を使用するだけでも、サーキュラーファッションを実践できます。古着のなかには「サイズが合わなくなった」「ほとんど着る機会がない」などの理由から、まだまだ着られるのに廃棄されてしまうものも多くあります。
自分に合う古着やおさがりの服を使用し、衣服1枚あたりの着用期間を長くすることで衣服の短期的な廃棄量削減につながるでしょう。
衣類のリメイク・リペア
穴が開いたりボロボロになったりした衣服については、リメイクやリペアを施すのもよいでしょう。古くなった服に手を加えることで、着用期間を長くできます。
衣服として活用しない場合でも、生地としてポーチやハンカチなどの小物に生まれ変わらせることで、無駄なく衣服の再利用が可能です。
衣類の素材にあったケアを行う
1つの衣服を長く着用できるように衣服の素材にあったケアを行うことも、サーキュラーファッションにつながります。
素材に合わない洗濯やケア方法は、衣服を傷める原因になり劣化を早めてしまいます。衣服に付いている洗濯表示に従い、適した洗濯方法を取り入れることで衣服が長持ちするため、衣服の廃棄量の削減につながるでしょう。
衣類のシェアリング
家族や友達同士、あるいはレンタルサービスを利用して衣服をシェアリングすることも、身近なサーキュラーファッションの例です。
1つの衣服を複数人でシェアすることで、必要なくなったものでも他の人が使ってくれるため、衣服の着用期間の長期化・廃棄量の削減につながるでしょう。
身近にあるサーキュラーファッションを取り入れてみよう
地球環境へ配慮したサーキュラーファッションは、環境に関するさまざまな課題を抱えるアパレル産業はもちろん、消費者からも高い注目を集めています。
今回ご紹介したブランドや取り組み例も参考にしながら、普段の生活にサーキュラーファッションを取り入れてみてください。
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