わけあり野菜・食品を扱うシェアリングサービスの現状は?
徐々に注目されつつある「わけあり野菜・食品を扱うシェアリングサービス」ですが、とりまく環境はどのようなものなのでしょうか。ここでは、日本のフードロスと野菜や食品に関するシェアリングサービスについての現状を解説します。
日本のフードロス発生量は550万トン以上
「フードロス」とは、本来食べられる状態でありながら捨てられてしまっている食品のことです。農林水産省の報道発表資料によると、2019年度のフードロスの量は推計約570万トンとなっています。国民1人当たりに換算すると年間で約45kg、1日で約124gと茶碗約1杯分のご飯の量を捨てている状況です。
またフードロスには、食品関連事業者から発生する「事業系フードロス」と一般家庭から発生する「家庭系フードロス」の2種類があります。同資料によると、2019年度のフードロス推計値は事業系が309万トン、家庭系261万トンです。2018年度の数値と比較すると、どちらも15万トン減少している状況です。ちなみにこれらの数値は、フードロスの推計を開始した2012年度以降最少値となっています。
野菜のシェアリングサービスの利用状況はまだ少ない
日本国内では、モノ・スキルのシェアリングサービスに比べて野菜のシェアリングサービスの利用率が少ない状況です。大手コンサル会社が2020年3月に公開した「リユース・フードシェアリングの利用状況に関するアンケート結果」によると、野菜のフードシェアリングを「利用したことがある」と回答した人は全体の5.2%となっています。
同アンケートにおいて野菜のフードシェアリングを「利用したことはないが、今後利用してみたい」と回答した人は、全体の60.0%です。野菜のフードシェアリングに対する利用者の関心が低いわけではありません。そのため、今後のサービス・アプリの展開に伴う利用経験者の増加によって、フードロスはさらに減少していくでしょう。
国全体でフードロス削減の活動を推進している
野菜のシェアリングサービスの展開をはじめ、日本国内ではフードロスに対する注目は年々高まっている傾向にあります。2019年10月には、「食品ロス削減推進法」が施行されています。2020年3月には、フードロス削減活動で各業者・消費者が求められる行動などをまとめた「食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針」が公開されました。
また、フードロス削減に貢献している団体や事業者を、「食品ロス削減推進大賞」として表彰するなどの活動も実施しています。法律や仕組みなどの形で本格的に進めていることから、日本国内のフードロス量は今後さらに削減されるでしょう。
わけあり野菜・食品を扱うシェアリングサービスの種類は?
今やモノ・スキルだけでなく、野菜や果物などの食品類をシェアするサービスも数多く存在しています。ここでは、わけあり野菜・食品を扱うシェアリングサービスの種類について解説しましょう。
①プラットフォーム型
「プラットフォーム型」は、インターネット上のサイトやアプリを通して、わけあり野菜や食品をシェアリングできる仕組みです。例として、規格外野菜などを扱う「única(ウニカ)」や、フードロス削減・飢餓の撲滅をコンセプトとした「tabeloop(たべるーぷ)」などが挙げられます。
利用者はサイトに登録することで、農家や団体などの生産者が出品している野菜や食品の購入が可能です。サイトによって、コンセプトや出品・購入が可能な食品の種類が少しずつ異なります。また、生産者とチャットでコミュニケーションが取れるサイトがある点も魅力的です。ネットショッピング感覚で、簡単にフードロス削減に貢献できるでしょう。
②実店舗型
「実店舗型」は、食品関連企業や農家・自治体が連携し特定の場所に設置した店舗で、規格外野菜やわけあり食品などを販売する仕組みです。例としては、大阪府が開催していた規格外野菜販売イベント『もったいない市』などが挙げられます。
野菜・食品の種類はプラットフォーム型に比べて少ない傾向にありますが、実物を店舗でチェックできるという魅力があります。そのため、自分の地域でフードロス削減に貢献したい方や、初めてわけありの野菜や食品を購入する方にもおすすめです。
③フードバンク型
「フードバンク型」は、食のセーフティーネットとも呼ばれるスタイルです。生産者・個人から寄付された食品を収集し、食事が必要な人に届ける仕組みになっています。わけあり野菜だけでなく、パンや缶詰などのシェアリングも行っているのです。
例として、セカンドハーベスト・ジャパンが実施している「marugohan(まるごはん)」や「パントリーピックアップ」などの食品提供プログラムが挙げられます。NPO団体をはじめとした非営利団体を中心に展開しており、生活困窮者やひとり親家庭・高齢者などが主な対象となっているのが特長です。全国の生活困窮者の食事を支援するとともに、フードロスの削減にもつながるシステムといえるでしょう。
シェアリングサービスではどんなわけあり野菜がもらえるの?
野菜や果物などが手軽に入手できるシェアリングサービスでは、どのようなものがもらえるのでしょうか。ここからは、シェアリングサービスでもらえるわけあり野菜の種類について紹介します。
規格外野菜
「規格外野菜」とは、「JAS」をはじめとした農産物の出荷規格・品質規格をクリアしていない野菜のことです。規格では野菜の大きさや形状・色ツヤなど、さまざまなチェック項目が用意されています。規格外と判断された野菜はジュースなどの加工品の材料にされたり、そのまま廃棄されたりする仕組みです。そのため、フードロスの量が増加する要因として注目すべき要素ともいえます。
規格外野菜は、表面にキズが付いている、形がきれいではないなどの理由ではじかれているだけであり、美味しさと風味は規格をクリアしたものと何ら変わりありません。規格外野菜を通してフードロス削減に貢献しながらブランド野菜の風味をより手軽に楽しめるのも、シェアリングサービスの魅力といえるでしょう。
地域・季節の野菜
野菜のシェアリングサービスでは、「地域・季節の野菜」をもらえることもあります。特にプラットフォーム型では、その地域・季節でしか収穫されない種類・品種の規格外野菜を出品していることも少なくありません。フードロス削減に貢献するだけでなく、各地の特産品や旬の野菜の美味しさを知るきっかけづくりにもなるでしょう。
加工野菜
野菜シェアリングサービスでは、規格外野菜を使った「加工野菜」も出品されています。千切りパックやジュースなど、各地の新鮮な野菜の風味や食感をまるごと楽しめる商品がもらえます。フードロス削減に貢献したいときにはもちろん、毎日の食事に野菜をプラスしたいときにも活用できるでしょう。
わけあり野菜・食品を扱うシェアリングサービスを利用するメリットとは?
シェアリングサービスでは、全国各地のわけあり野菜・食品を手軽に楽しめる以外にもさまざまなメリットがあります。ここからは、わけあり野菜・食品を扱うシェアリングサービスを利用するメリットを紹介します。
フードロス削減に貢献できる
野菜のシェアリングサービスで扱っているのは、規格外野菜をはじめとした「食べられるけれど廃棄される食品」が中心です。シェアリングサービスでは廃棄されてしまう規格外野菜に、新しい価値や使い道を付与できるとされています。結果的に、フードロスの量を減少させることにもつながるでしょう。
上質・地域限定の食材が安い価格で楽しめる
シェアリングサービスでもらえる規格外野菜は、市場で出回っているものと変わらない風味・食感のものがほとんどです。しかし、形や色が悪いなどの理由から市場では価値がつかないため、フードロスにつながっています。
シェアリングサービスやアプリでは、そういった規格外野菜が通常よりも安い価格で出品されています。そのため、通常では購入を渋ってしまうような高級ブランドや地域限定の品種も手軽に楽しめるのが、魅力といえるでしょう。
まとめ買いがしやすい
野菜シェアリングサービスの場合、規格外野菜などがダンボールなどに詰められて販売されていることがほとんどです。そのため、まとめ買いがしやすい傾向にあります。サイトによっては、生産者がおすすめする旬の野菜・果物の詰め合わせが定額で購入できる場合もあります。これは、献立や料理のレパートリーの拡大にもつながるでしょう。
わけあり野菜のシェアリングサービスを利用するときの注意点は?
シェアリングサービスで実際にわけあり野菜を購入する際には、さまざまな注意点があります。ここでは、シェアリングサービスでわけあり野菜を買うとき、もらうときの注意点について解説していきます。
購入後の賞味期限・状態はチェックしよう
わけあり野菜のシェアリングサービスで扱っている食品は、1箱が大容量であることも多いです。新鮮なうちに使い切れるように、購入後の賞味期限や状態をしっかりチェックすることが大切です。特に野菜は生鮮食品なので、そのまま放置していると腐りやすくなってしまいます。
ひび割れが起こっているものから順番に使ったり傷まないように注意したりすることも、フードロス削減につながる一歩になります。もし購入した野菜が残ってしまった場合には、漬物や冷凍するのもおすすめです。
野菜1つひとつのサイズ・重量に差が出やすい
シェアリングサービスで購入できる野菜は、出荷規格から外れてしまったものがほとんどです。そのため、同じ種類の野菜でも大きさや重量などに個体差が出やすい傾向にあります。つまり、同じグラム数で購入した場合であっても、同じ個数や大きさのものが入っているとは限りません。あらかじめ目安となる個数を生産者側に質問して購入点数を調整することで、家庭でのフードロス予防にもつながるでしょう。
日付指定での配送が難しい場合もある
シェアリングサービスは基本的に、生産者が収穫した野菜を利用者に直接配送する仕組みになっています。野菜の成長具合によって購入したい野菜の収穫・配送可能時期が、地域や天候などによって多少の遅れが出る可能性もあるのです。また、利用者側が日付指定での配送を依頼することが難しい場合もあります。
フードロス削減につながるおすすめの野菜シェアリングサービス・アプリ一覧!(2022年10月末現在)
シェアリングサービスを活用すればフードロス削減に貢献できるだけでなく、全国各地の美味しい野菜や果物が手軽に楽しめます。ここでは、そんな規格外野菜や果物を扱うおすすめのシェアリングサービスを紹介します。
①tabeloop(たべるーぷ)
「tabeloop」は、バリュードライバーズ株式会社が運営するフードシェアリングサービスです。サイト内では規格外の野菜・果物だけでなく、販売先が見つからない生鮮食品なども扱っています。なかには1円で販売されている「お宝商品」と呼ばれる食品もあるため、お得に美味しい野菜を手に入れたい人にもおすすめです。
商品を購入した代金の一部は、国連専門機関のFAOをはじめとした世界中の飢餓撲滅に貢献する団体へ寄付されているのも注目すべきポイントです。サイトの利用を通してフードロス削減だけでなく、間接的に飢餓撲滅団体への支援もできます。
②タダヤサイ
株式会社日本野菜が手掛ける「タダヤサイ」は、規格外野菜や果物を数量限定で送料のみで配送してもらえるのが特長です。お米や加工食品の販売もしているため、各地域のさまざまな食材を気軽に楽しめます。
各商品ページではファン数が可視化されており、注目度の高い食材も一目でチェックできます。無料で旬の野菜を楽しみながら、フードロス削減を実践したい人におすすめのシェアリングサービスです。
③única(ウニカ)
「única」は、株式会社スタイル・フリーが展開しているシェアリングサービスです。形が悪い・規格外などといった野菜や果物を、「ユニーク野菜」として提供しています。ネットショッピング感覚で購入でき、商品の状態や保存方法などの気になることはサイト上で生産者に直接質問が可能です。
また、サイト上には生産者が実践するレシピなども数多く投稿されているので、購入した後も便利なサービスといえます。フードロスに貢献しながら、毎日の食事のレパートリーを広げたい人におすすめのシェアリングサービスです。
④みためとあじはちがう店
「みためとあじはちがう店」は、フードロスの削減をコンセプトとしたシェアリングサービスです。規格外野菜や果物を詰め合わせた「おまかせパック」が人気で、サイト内リストに掲載されたさまざまな地域の旬野菜の中から、目利きのスタッフがセレクトします。何が届くかはお楽しみという点が、魅力といえるでしょう。
⑤ポケットマルシェ
「ポケットマルシェ」では、全国の農家・漁師と直接コミュニケーションを取りながら食材を購入できます。サイト内のコミュニティ機能を通して、生産過程の様子や美味しい食べ方などの情報も収集できる点が特長といえます。フードロスに貢献するだけでなく、旬の野菜をより美味しく楽しみたい人にもおすすめのシェアリングサービスです。
わけあり野菜のシェアリングサービスでフードロス削減に貢献しよう
フードロスは世界各国で注目されている課題であり、日本国内でもさまざまな企業・団体がフードロス削減活動を実施しています。わけあり野菜のシェアリングサービスはスマホやパソコンがあれば簡単に利用できるので、手軽に始められる方法といえるでしょう。ぜひ今回紹介したシェアリングサービスも活用しながら、フードロス削減の第一歩を踏み出してみてください。
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