宇宙に関わるシェアリングサービスに注目

宇宙に関連するビジネスは、宇宙へ行くためのロケットの開発や宇宙旅行をはじめとした、宇宙空間を利用した事業全般を指します。人工衛星から取得したデータの利用や、宇宙を介したインターネット通信などは、地上の生活でも利用できる分野や活用できる幅が広く、また宇宙関連の技術やノウハウを地上の事業へ生かすことで、これまで以上に私たちの生活を豊かにすることが期待されています。

宇宙に関連したビジネスは、開発コストや必要な技術が膨大であることや、多種多様な分野で利用できるという特徴からシェアリングして活用する形態に注目が集まってイマス!

公共で利用されてきた事業に民間企業が参入し市場が拡大

もともと宇宙開発は、国の安全保障に関わるうえに、膨大な開発費用がかかるため、政府が主導しその役割を担ってきました。人工衛星で取得した地球観測衛星のデータは、地図や気象以外にも幅広い分野で利用されており、遠隔でリアルタイムにデータを取得することができるため、災害監視、地下資源の研究、農林水産業、地図・都市計画などで使用されています。

しかし近年になって、技術の進歩とともに、開発や打ち上げにかかるコストが下がったこと、また、ベンチャーキャピタル(※1)やエンジェル投資家(※2)が宇宙事業に携わるベンチャー企業に投資するといった流れがあり、民間のベンチャー企業による宇宙開発が活発になっています。

民間が主導することで宇宙開発は加速的に進み、商業利用が拡大するなど、未開拓の領域でありながら、市場が大きくなるとみられています。

(※1)ベンチャーキャピタルとは…未上場のベンチャー企業に投資し、企業が成長・上場した後に、株式や事業の売却によって利益を得る投資会社のコト。経営コンサルなどを行い企業の成長を図ることもアリマス。
(※2)エンジェル投資家とは…創業間もない企業に出資する個人投資家のコト。有望な企業をスタートアップの段階から支え応援することや、企業の成長後に株式などから利益を得ることを目的としてイマス。

テクノロジーの進化によってコストは引き下げられたとはいえ、ロケット一つ、人工衛星一つを打ち上げるまでに必要な機材や技術、費用は膨大で、一つの会社で全てを内製化することは困難です。そのため、各機器や部品の設計や製造、試験や打ち上げ場などを政府や各機関や各企業が役割を分担しています。機器やサービス、お互いの技術やノウハウを共有することでやっと、宇宙産業のビジネス環境が整いつつあります。

宇宙事業に参画した企業向けのシェアリングサービス

実際に展開されている宇宙に関連したビジネスを見てみましょう。ここでは特に、ロケットや人工衛星の打ち上げ、宇宙空間を利用した研究などを行う企業に向けたサービスをご紹介します。

シェアして使える宇宙港「北海道スペースポート」

北海道スペースポート(HOSPO)は、北海道大樹町にあるシェアして使えるスペースポート(宇宙港)です。ロケット射場、実験施設、滑走路などを、宇宙事業に携わる世界中の民間企業や大学研究機関等が利用しています。

ロケットやスペースプレーン(※3)の実験や打ち上げを行う上で必要な各種設備が揃っており、また打ち上げに必要な気象や地上の環境情報の提供、宇宙での活動方法や輸出入に関するコンサルティングも行っています。

(※3)スペースプレーンとは…飛行機のように翼があり、ロケットエンジンを搭載して水平離着陸ができる宇宙船のことをサシマス。

人工衛星のデータを地上で送受信「人工衛星アンテナシェアリングシステム」

近年になり人工衛星の打ち上げペースが急速に上昇し、世界で2022年に軌道上に打ち上げられた人工衛星は過去最大の2,368機と過去10年間に約11倍に増加しています。(※4)人工衛星の増加により、取得できるデータ量は増え、多種多様な分野での利用が期待されています。

ただし、人工衛星と地上でデータを送受信するには、地上にもアンテナが必要です。宇宙通信のインフラを提供する株式会社インフォテスラでは、人工衛星と通信する地上アンテナを世界中に設置し、シェアリングするサービスを手がけています。

(※4)参考:朝日新聞デジタル「激戦時代のロケット開発競争 背水の日本、H3成功で巻き返せるか」 

人工衛星を介した高速ブロードバンド「スターリンク」

宇宙空間を利用してインターネット接続を行うサービスもあります。Starlink(スターリンク)は、宇宙を周回する人工衛星によって提供される衛生ブロードバンドインターネットです。以前より静止衛星による通信サービスはありますが、低軌道を周回する数千機の衛星により高速かつ低遅延のデータ通信を実現しています。

Starlink端末やau基地局が人工衛星と通信を行うことで、短期間での回線提供ができたり、幅広い範囲での通信が可能です。従来の海底ケーブルでの不感地帯である林間部や災害地域などの通信確保に利用されています。

個人でも利用できる宇宙サービス

宇宙開発をしている会社でもなければ、個人ではまだ夢のような話で関係ないと思っている方もいるかもしれません。しかし近年は普段の生活に取り入れられる宇宙関連のサービスが出てきています。

最期に相応しい壮大なお別れができる「宇宙葬」

大切な人との最期のお別れはほとんどが火葬です。日本では、明治まで土葬が一般的でしたが埋葬する場所を必要とするため徐々に行われなくなり、海外で見られる水葬(海洋散骨)や風葬なども法理上禁止されています。そんななか、新たな埋葬方法として登場したのが宇宙葬で、1997年に初めて行われたと言われています。

さがみ典礼では、銀河メモリアルサービスと提携し、ご遺灰を納めたカプセルをロケットや人工衛星に搭載、宇宙空間に打ち上げたり、月面へ届けるプランを提供しています。生前、宇宙に憧れを持っていた方や、お墓に入りたくないというニーズに応えています。

宇宙ビジネスはエンターテイメントとしても期待「人工流れ星」

宇宙に関する事業はエンターテイメントの分野でも取り組まれつつあり、近い将来の実現が期待されているのが人工流れ星です。現在、自然に見られる流れ星は、宇宙空間にあるチリの粒が地球の大気と激しく衝突し、高圧・高温になり光を放つことで生じています。普段よりも流星の確率が高い「流星群」の時はあっても、広い夜空のどこに見えるかは予測不可能で、確実に流れ星をみる方法はなく、残念ながら人類の好きなタイミングで流れることはありません。

そんな流れ星を人工的に流そうと考えたのは、株式会社ALEの岡島礼奈氏です。小型人工衛星に人工流れ星の素となる小さな金属球を搭載、宇宙で放出し、実現すれば都会でも肉眼で見える程度の明るさになるそうです。2025年に人工流れ星の実現を目指して開発を進めており、オリンピックなどのスポーツ大会や音楽イベント、企業のプロモーションでの活用や観光コンテンツとしての利用が期待されています。

宇宙の情報から作物を育てる「リモファーム」

JAMSS(有人宇宙システム株式会社/Japan Manned Space Systems Corporation)は、国際宇宙ステーションの運用管制や、宇宙実験の実施、宇宙飛行士の訓練や搭乗支援を行ってきた、まさに宇宙に関する事業におけるリーディングカンパニーです。そして、JAMSSは、宇宙ステーションの運用や実験等で培った技術や経験を生かして、地上での暮らしを豊かにするサービスをIT、鉄道、製造、農業など幅広い分野で提供しています。

JAMSSが提供する「リモファーム」は、農業で活躍するスマホ用のアプリです。衛生データや気象データを自動取得し、気候や降水量、日照量の情報の表示を行います。また、自宅にいながら遠隔で圃場の生育状況を面的に把握することもできます。農薬や肥料コストの削減、見回りなどの人的コストの削減にも役立ち、安定した作物の育成や収穫や生産性の向上を支援しています

月のクレーターの画像認識システムを応用した不動産情報の取得へ

宇宙からのデータは不動産業でも利用されています。株式会社Penetratorは、衛星画像から不動産の情報を収集する「WHERE」を展開しています。WHEREは、JAXAで使用されている月のクレーターの画像をAIで分析する技術を応用してつくられた不動産情報の取得システムです。世界中の土地を画像認識技術によって、駐車場や畑といった土地の種類や店舗や工場といった建物の種類を特定し、法務省のシステムと連携することによって不動産情報を瞬時に取得することができ、不動産取引の仕入れ業務を自動化しています。

宇宙シェアリングサービスがもっと身近になる日が来るかもしれません

宇宙開発は、これからスピードを増して進化していきます。人工衛星から得た地球観測データは既に多様な分野で地上での生活で利用され、近い将来、人工衛星によるインターネット回線も実用化が進めば、個人の利用としてもさらに普及するかもしれません。

インフラから人工流れ星のようなエンタメまで、宇宙に関連した事業は進化を続け、それらをシェアして使えるようになることで私たちの生活がもっと便利に豊かになるでしょう。

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