モビリティハブとは何か?
モビリティハブとはシェアリング型移動サービスを利用するための乗り換えスポットです。駅のような交通サービスの乗り換え場所としてだけでなく、様々なサービスと組み合わせることで、その場所自体が人々の交流の場としての役割や地域経済を発展させる役割が期待されています。
交通の現状と課題
過疎地域での公共交通機関の廃止・統合が相次いで行われていることや、高齢者の免許返納などにより、高齢者を中心に地域住民の移動手段がなく生活に支障をきたしています。ドライバー不足は深刻化しており、道路運送法により白タク(自家用車による営業行為)は禁止されていましたが、2024年4月にタクシーが不足している地域や時間帯によって限定解禁される見込みです。
また、首都圏や観光地などによっても交通渋滞の緩和などの目的からMaaSが進められています。マイカーから交通サービスの利用へ変わることで、駐車場の不足やそれに伴う路上駐車の問題、排気ガスなどの環境問題の解決にもつながると期待されています。
2023年7月の道路交通法改正により条件はあるものの電動キックボードを免許がなくても乗れるようになり、同じ目的地へ移動する人との相乗りをマッチングするアプリなどライドシェアも進んでいます。
なぜ今モビリティハブに注目が集まっているのか
働き方の多様化でリモートワークなどが進み、徒歩圏内や生活圏内でのサービスの充実が求められています。モビリティハブは、駅など街の中心地のみでなく住宅地の空き地などに設置することが可能です。長距離の移動を可能とする電車やバス等の駅へのアクセスを便利にするだけでなく、地域内で運行される車両やレンタサイクルなどの近距離の移動に適した手段もあり、生活圏に新しい移動手段をもたらします。
また、近距離移動サービスの利用に留まらず、拠点となるモビリティハブ自体に生活に必要なサービスや情報を集約する動きが進んでいます。「便利に移動する」だけでなく「楽しみながら滞在する」場として注目が集まっています。
多様な活用方法のあるモビリティハブのメリット
交通アクセスが良くなり地域の移動に関する課題を解決
モビリティハブがあることで、利用できる交通サービスの幅が広がり利用目的や利用者にあった手段を選ぶことができます。
カーシェアリングは、自動車の使用頻度によってマイカーを購入するよりも、お得に便利に使用することができます。ショッピングモールなどは、駅から遠く、また運行しているバスの本数が限られているなどマイカーで訪れることが前提となっている施設もあり、カーシェアリングなどの移動手段が便利です。
また、移動手段のない高齢者は、生活必需品を購入するための買い物や、病院への通院など、日常生活を送る上で支障が出ているケースも少なくありません。生活の利便性だけでなく、趣味や生きがいとなる活動にも参加しにくくなります。
移動手段がなく自宅に引きこもりがちになると、運動量が減少、人との交流が減少することにより心身の機能が低下する恐れがあります。コロナ禍の自粛生活をきっかけに外出頻度が減る人も増え、高齢者の移動手段がないことや、それに伴う引きこもりは、ますます課題となっており、地域で運行されるマイクロバスや車での送迎等の充実が期待されています。
近隣地域の経済活動が活性化される
近距離の移動手段が充実すると、地域の飲食店、美容院や小売店などの店舗へアクセスしやすくなります。駅から離れた場所にある店舗や駐車場がない店舗も利用されやすくなり、店は認知の獲得や売上の向上、顧客としても近隣の店舗を利用しやすくなり、今まで隠れた名店とされていたお店を知るチャンスになります。
また、モビリティハブにキッチンカーなどの移動型店舗として出店することで、利用者はわざわざ店を訪れずともモビリティハブでサービスを受けることができます。
モビリティハブは移動を円滑にするだけでなくサービスを受けられる場所として、地域の経済活動を活性化する効果も期待されているんですね!
観光地でもニーズが高まるモビリティハブ
観光地でもMaaSの推進やモビリティハブを設置する動きがあり、乗車運賃と入場料のセットとするサービスも展開されています。例えば東武鉄道やJTBを中心とした数社が共同で提供している「NIKKO MaaS」は、世界遺産である日光東照宮の参拝や周辺での移動や観光をシームレスに行うためのサービスです。
人気の観光スポットが離れている場合は観光地内を巡る移動手段が必要ですが、モビリティハブの設置により移動手段が増えることで、景色を楽しみながら移動したい、天気が良いので風を感じながら移動したいなどの気分やニーズに合わせて移動手段を選ぶことができます。モビリティハブに観光案内やお土産屋を設置することで、観光がよりスムーズになります。
また、観光地は季節や時間帯によって利用率が大きく変わることがあり、混雑しやすいときに発生する待ち時間もモビリティハブで過ごすことで楽しみながら、時間を有効に活用できます。モビリティハブでイベントを開催することや店舗を出店することで、モビリティハブの利用を目的として訪れる人も増えることでしょう。
利用者も運送業者も便利になる物流での活用
MaaSやモビリティハブは、物流における利用拡大や課題解決が期待されています。過疎地域では人口の減少に伴って、運送業の担い手の不足や利用者が減少し、運送サービスの継続が困難な場合があります。そこで、同一方向に向かう乗合バスやタクシーの空きスペースに荷物を載せて配送する試みが取り入れられつつあります。
もともとは旅客と荷物の両方を載せるいわゆる「かけもち」をすることはできませんでしたが、過疎地域においてタクシー等が業許可を取得するなど一定の条件で、荷物の運送が可能になりました。
またモビリティハブに宅配ボックスを設置することで、よりスムーズな配送や受け取りが可能になります。配送業者は、点在する個人宅へそれぞれ配達するよりも、モビリティハブなどまとまった場所に配達することで、工数を減らすことができます。またそれぞれの受取希望の指定時間に合わせての配達や、不在による再配達を減らすことができ、人手不足の解消や排気ガスなどの環境問題の解決にも有益であると考えられています。
サービスの利用者としても24時間の中で、自分の好きなタイミングで荷物を受け取ることができます。IoT化も進み、配達時間をお知らせするアプリや、QRコードでの宅配ボックスの鍵の解除、配送車の自動運転の導入によって、より安全により便利に利用することができます。
【事例】西尾レントオールにおけるモビリティハブの実証実験
建設機械やイベント資材レンタルの西尾レントオールでは、イベント会場横で、バス等にてご来場の方が電動キックボード、電動立ち乗り二輪車、電動バイク、電動カートなどをシェアしてご利用できるモビリティハブ体験の実証実験を実施しました。
会場へのアクセス方法としてシャトルバスを運行し、自家用車で来場された方には事前のナンバープレート登録で、来場時に駐車場入口でナンバープレートを読み取り、混雑を避けスムーズに利用できるよう駐車位置をLED版で案内する仕組みを取り入れました。
また、体験場にはトレーラーハウス等の仮設資材を利用して、待ち時間にもくつろげる広場を設置。より快適により楽しく過ごすことができる賑わいの空間を創り出しました。
▶西尾レントオールYouTube公式チャンネル|モビリティハブを活用したMaaS推進構想とにぎわい創出[実証実験:新しい建機展2023]
モビリティハブの実用化に向けて実証実験を進め、生活の利便性の向上や交流という新たな価値の創出による地域活性化への貢献を目指しています!
これからの普及が期待されるモビリティハブ
首都圏や過疎地域、観光地などによって人口密度や自動車の保有率など交通事情や地域の課題は異なりますが、移動や生活の利便性、交流など複合的な価値を生み出すモビリティハブの需要が拡大することは間違いないでしょう。
空き地などは単なる場所貸しにならないようにその地域に合わせてコーディネートを行うことで、駅やバス停とは異なった価値を創造することができます。
電気自動車や自動運転などのさらなる技術革新や普及にともなって、モビリティハブが当たり前になる未来はそう遠くないかもしれません。
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