インタビュイー:レンティオ株式会社 代表取締役社長 三輪 謙二朗(みわ・けんじろう)さん
2008年楽天株式会社入社。モバイル推進グループにてモバイル版楽天市場の拡大に貢献後 ECコンサルタントとしてキッチン日用品雑貨グループ配属。退職後、Eコマース企業を経て2015年4月に 株式会社カンパニー(現 レンティオ株式会社)を創業。
ユーザーの声をもとに圧倒的な品数と使いやすさを追求
------まず、レンティオとはどのようなサービスでしょうか。御社ならではの特徴も併せて教えてください。
簡単にいうとカメラと家電を中心にしたレンタルサービスです。特徴としては、3泊から1週間の短期間と月額制の2つの利用プランがあるという点と、レンタルしている商品をそのまま買い取ることができる点です。
------三輪社長自身の経験がきっかけで創業されたそうですね。
はい。友達の結婚式の余興で「獅子舞」が必要になり探していたんです。3万円で売っているサイトを見つけたんですが、一日限りの余興アイテムとしては値が張りますし、保管場所もとるので悩んでいました。そこで調べてみると1件だけレンタルしている会社があって、2万円で借りられたんです。3万円で買えるものを2万円で借りる人がいるということはレンタルのニーズがあるのではと思い、そこからいろいろ調べ始めました。当時家電のEC事業に携わっていたこともあり、例えば10万円のカメラを1回1万円でレンタルするとして、11回レンタルすれば利益が出せるな、と考え起業に至りました。
------サービスのコンセプトを教えてください。
とにかく「借りやすい」「返しやすい」というユーザー設計に気を遣っています。
借りる際はネット通販と同じ感覚で、サイトから商品とレンタルプランを選び、受け取り日時を指定して注文します。iPhoneの専用アプリからもご注文が可能です。
返却は郵便局、コンビニ、運送会社の営業所持ち込み、ご自宅への集荷、宅配ロッカーのいずれかから可能です。マイページから操作すると発送用のバーコードが発行されるので、紙の伝票に記入する必要はありません。お届けした箱でそのまま返却できるようになっていて、梱包用のガムテープも同梱されています。送料は往復ともに無料です。
このあたりはお客様から届いた声を反映していて、常にユーザビリティを高めることを意識しています。
------利用者からすると嬉しいメリットですね。特にコンビニからの発送は近年一般的になっていますし、簡単に返せるということが利用ハードルを下げているように感じます。取り扱い商品にはどのようなものがあるのでしょうか。
家電とカメラを中心に、お宮参りや七五三用の着物、スーツケース、スノーボードウエア、家具、ベビー用品など、6,500種類以上、在庫の数でいうと約20万点を扱っています。
------すごい数ですね。ホームページには「リクエストフォーム」があるようですが、ユーザーからのリクエストも可能なのですか?
はい。毎日2~3件ほどのご連絡があります。例えば今日は、韓国発のEMS美顔器とワイヤレスイヤホンのリクエストがありました。お取引のあるメーカーの商品であればすぐに交渉して取り扱いさせてもらいますし、そうでなければ取引の窓口を開くところから始めます。
二つの利用プランで「賢い消費」を提案
------幅広い商品をラインナップされていますが、皆さんどのようなシーン・目的でレンタルされるのですか?
利用目的は大きく二つあります。一つは購入の参考にするためです。高機能な家電製品など、「購入の前に性能や使い心地を試したい」という方が利用されます。代表的な例がロボット掃除機です。店頭で実物を見ることはできますが、家によっては段差が多かったり、ソファの足が低く入っていけなかったりするケースがあるので、自宅で試してみたいというニーズがあるんです。ドライヤーや美顔器もこちらに分類されますね。
もう一つは、旅行やイベントに合わせた一時的な利用です。一時的にしか使わないのに高価な商品は、買うより借りた方がお得です。最近では10万円ほどする高機能な「防振双眼鏡」の需要が多く、月間3,000件ほどご利用いただいています。アイドルのコンサートに行く際、ステージから遠い座席からでも手振れせずによく見えると、「推し活」をされる方に口コミで広がっているようです。
それぞれ、自動更新の月額制と3泊からのワンタイムプランをご利用いただけます。
------毎月のご利用者数を教えていただけますか? また、どういった方の利用が多いのでしょうか。
現在、月間で14万人以上の方にご利用いただいています。そのうち、約半数以上の方が1年以内のリピーターです。基本的には個人の方が対象になりますが、法人様でもご利用いただけます。
性別でいうと圧倒的に女性の方が多いですね。男性に比べると、女性の方が消費に対して賢く考える傾向があるようです。年齢層では40代が最も多く、次に50代と30代、その次が20代です。倉庫のある一都三県を中心に宣伝していることもあり、地域別では関東圏が多いですが、全国からご利用いただいています。
※以下、利用者データ
【利用者データ】下記は三輪社長のnoteより
------リピート率5割超えは高いですね。例えば利用中に故障してしまった場合は、どのように対応されるのですか?
商品や在庫の状況により、レンタル費用の返金や交換、修理、代替品のお届けなどを行っています。通常のご利用範囲での故障や不具合が発生した場合、費用のご請求は一切ありません。お客様の過失による故障や破損についても、あきらかな故意でない限り、賠償費用は2,000円を上限としています。
------高価な商品もあるので気になっていましたが、それなら安心です!
メーカーとの連携がユーザーのメリットにもつながる
------メーカー200社以上と提携されているそうですが、レンタル事業への提携についてはどういった反応がありましたか?
はい、国内の家電メーカーは基本的にすべて網羅していると思います。創業当時は、「レンタルされると商品が売れなくなるのでは」という懸念があり、拒絶されることもありましたが、現在はメーカー側にも広告宣伝の機会としてとらえられるようになったため、ほとんどありません。
特に試してもらいたい商品はメーカーからの支援をいただき、ユーザーへ初月無料などよりお得にご利用いただけるキャンペーンも行っています。
販売代理店や小売店から仕入れることもできますが、メーカー直で仕入れることによって商品のバリエーションが増えますし、レンタル価格を抑えることができます。
※以下、キャンペーン商品(取材時時点)
------Win-Winの関係を築けているというわけですね。サービスを提供されるうえで大変な点はありますか?
メンテナンスを含むオペレーションの組み立てですね。レンタルはECと異なり、仕入→貸出→返却→メンテナンスという流れを取扱商品ごとに作る必要があります。例えばカメラであればメンテナンスといえばデータ消去と消毒くらいですが、キッチン家電だとニオイがついてしまいます。鍋に残ったカレーの匂いの取り方はメーカーに聞いてもわからないので、社内で試行錯誤して方法を探っているんです。
------破損、汚損された状態で返却されることもあるんですか?
ほとんどなく、全体の0.2~0.3%程度です。日本人は比較的「借りたものはきちんと返そう」という意識が働きやすいようです。海外の同業他社に聞いてみると、例えばロボット掃除機は99%ゴミが入っている状態で返却されてくるそうなんですが、当社ではほとんど中身は空の状態です。
------「出前の器を洗って返す」のような感覚なのかもしれませんね。利用されたお客様からはレビューとお手紙もたくさん届くと伺いました。
そうなんです。一般的なECのレビュー率は0.8%前後なのですが、当社では約8%にも上ります。その理由の一つとしては、お試しでレンタルされた方が、試した結果どうだったかということを言いたくなっているということがあります。もう一つは、思っていたより簡単に借りられた、返せたという「ハードルを越えてきた」という反応だと思っています。
レビューの中で一番嬉しいのは「もともと買う気はなかったけれど、レンタルしたらよかったので買いました」というコメントです。納得したうえで購入いただき、メーカーの売上にも貢献できたということなので、サービスを提供してよかったと感じますね。
また先ほどの防振双眼鏡をレンタルいただいた方からは「○○ホールの○○座席で使い、ステージがよく見えた」という熱量の高いレビューをしてくださることが多いです。
返却時に封入されていたお手紙は、オフィスに掲示してメンバーのモチベーションにつなげています。
------直筆の手紙というのは嬉しいですね!まさにレンティオのコンセプトが伝わっているんですね。
※以下写真はオフィスに貼られている手紙
「レンティオなら何でもある」を目指したい
------順調に成長を続けているところかと思いますが、今後はどのようにサービスを展開される予定ですか?
一つは、自社で構築したレンタルサービスのノウハウを外部に提供していくことです。すでに一部でスタートしていますが、自社商品のレンタルを自社で始めたいと考えるメーカーや小売店に向けて、レンティオのシステムとオペレーションをご利用いただける「Rentify」を推進していきたいと考えています。
メーカーのサイトからレンティオのサイトに遷移しそこからレンタルしていただくのでもよいのですが、自社サイト内で注文が完結した方がユーザーとの接点を持ち続けることができ、ユーザーの安心感にもつながりますからね。
------メーカー側の利益まで考えているわけですか。それではお客様に向けた戦略としてはいかがでしょうか。
もっと借りやすいサービスにして、より幅広いお客様にご利用いただけるようにしたいです。現在は30代以上のお客様が多いのですが、学生さんや20代前半の若い方にこそ、本当に間違いないと思ったものを賢く買ってほしいので、例えばコスト面でメーカーさんにご協力いただいて、より借りやすいレンタル料金にするということも考えています。
そのために、商品カテゴリと年齢層、性別などをクロス分析して、属性ごとの特徴も把握しています。強い部分はより強くするためのプロモーション、弱い部分はどうしたらレンタルしてもらえるかという戦略を両軸で検討しています。
あとは商品のラインナップをさらに増やして「レンティオなら何でもある」という状態を目指したいですね。ニーズが見込めたら、獅子舞のレンタルも導入したいと思っています!
柔軟で誠実なレンタルビジネスで「四方よし」を実現
お話を伺っていて感じたのは、どんな質問にも真摯に答えてくださる三輪社長の誠実な人柄です。数年前までご自身もカスタマーサポートとして直接ユーザーの声を聞いていたとのことで、常にサービスの使いやすさ、機能、価格などをユーザー視点で見直してこられたようです。また、協力関係にあるメーカー各社とも良好な関係を築き、相互にプラスとなるビジネスモデルを構築しています。
ゴミの削減や資源の再利用に寄与するレンタルサービスは、現在求められる循環型社会、SDGsの達成にも大きな役割を果たします。その意味でレンティオのビジネスは「自社」「メーカー」「ユーザー」「環境」の「四方よし」を実現しているといえるのではないでしょうか。
文:大貫翔子
広告代理店の営業、通信系企業の販売促進を経て、2013年より広告制作プロダクションにて編集・ライターとしてのキャリアをスタート。2019年12月にフリーランスの編集・ライターとして独立。業界向け広報誌、企業向けポータルサイトなどのBtoBメディアから住宅情報誌、求人記事といったBtoCメディアまで幅広く制作に携わる。
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