ふるさとワーキングホリデーの特長や魅力とは?
若者を中心に高い注目を集めているスキルシェアリングの1つが、「ふるさとワーキングホリデー」です。働くことと各地域の魅力に触れることが同時に体験できる「ふるさとワーキングホリデー」とは、どのようなものなのでしょうか。まずは、ふるさとワーキングホリデーの特長や魅力について解説していきます。
国内の各地域の暮らし・仕事を短期間体験できる取り組み
ふるさとワーキングホリデーは、都市に暮らす若者たちが受入先の地域に一定期間移住し、働いて収入を得ながら暮らしを体験するスキルシェアリングです。参加する若者たちはふるさとワーキングホリデーを実施する数々の地域と企業のなかから、自分の関心やスキルに合うものを選んで参加します。
ふるさとワーキングホリデーを実施する地域での仕事と人々との交流を体験できるとともに、自分では気が付かなかった自身の長所や仕事に対するやりがいの発見にもつながります。そのため、ふるさとワーキングホリデーでの体験は、将来のキャリアプランを考える際の参考にもなるといえます。
また、受入側には意欲溢れる若者たちの力を借りて地域の特長や生産物などの情報を発信できたり、地域や業界を活性化させるきっかけにできるという利点があります。働き手としての力やスキル、情報などを共有するという点でシェアリングエコノミーの一環としても注目されている仕組みです。
仕事として交流することで地域の魅力に触れられる
ふるさとワーキングホリデーはただの仕事体験というだけでなく、地元では体験できない学びや地域住民との交流を深められるところが評価できる点です。休日を利用して、実施先の地域の自然や景色を体験できるのもポイントで、通常の旅行では味わえない地域全体の魅力に触れられます。
暮らしのイメージがつき参加先への転職・移住のきっかけにもなりうる
ふるさとワーキングホリデーではさまざまな仕事を短期間だけ体験できるので、参加者は自分がこれまで経験したことがない業界や職種にも触れることが可能です。また、ふるさとワーキングホリデーではただ仕事をするだけでなく、各地域でのリアルな暮らしに触れられるので、将来的な転職や移住のきっかけになるという点もメリットです。
ふるさとワーキングホリデーができた背景とは?
ふるさとワーキングホリデーが若者と自治体の間で注目されている背景には、どのような要因があるのでしょうか。ここからは、ふるさとワーキングホリデーができた背景について解説していきます。
地域人口の高齢化・過疎化
日本は高度経済成長の過程で、農山漁村を中心とした地方の人口が大都市に流出しました。その結果、地方では一定の生活水準と事業の維持が困難になるなどのさまざまな問題が生じたのです。また、少子高齢化もともない、地域人口の高齢化や過疎化が問題視されています。総務省が公開している「令和元年度版 過疎対策の現況」によると、過疎化が進む市町村の数は全体の47.5%です。
地域人口の高齢化・過疎化による影響は現在でも注目されており、総務省や国土交通省などのさまざまな公的機関が解決策を講じています。未来を担う若者たちとの交流が可能なふるさとワーキングホリデーも、高齢化・過疎化が進む地域の定住人口を拡大させる効果が期待できる施策の1つとして、注目され始めたともいえます。
地方事業者の人手不足
昨今は、農業や漁業などの第一次産業を中心に、さまざまな業界において人手不足が叫ばれています。農林水産省が発表した「令和2年度 食料・農業・農村白書」によると、2020年の農業経営体は5年前に比べて22%減少し、従事者の平均年齢は0.7ポイント増加した67.8歳という状況です。
従事者の高齢化と担い手不足で種まきや収穫時期などの繁忙期での作業が困難になっている状況から、若者の力を借りるという目的でふるさとワーキングホリデーが活用されるようになったといえます。また、農業や漁業に関する仕事の体験をとおして、将来の担い手になりうる若者の関心を第一次産業にも向けさせる効果も期待できます。
地域活性化
地域の過疎化や少子高齢化によって、文化とコミュニティの担い手の数が少なくなると、地域全体の活力が減少してしまう状態になりかねません。ふるさとワーキングホリデーは都市の若者との交流をとおして、各地域の魅力や特長を広く発信することが可能です。そのため、観光や通勤、通学などを目的とした交流人口の増加を見据えたプログラムの1つとして、ふるさとワーキングホリデーは注目されたとも考えられます。
就職氷河期世代の雇用機会の創出
日本では、バブル崩壊を背景に就職が困難になってしまった「就職氷河期世代」と呼ばれる人材に対する支援が課題とされています。受入先となる地域での暮らしを体験できるふるさとワーキングホリデーは、就職氷河期世代の社会人に対して将来的な移住や地方での雇用機会の創出を推進する効果が期待できるとして、関心を集めているといえます。
ふるさとワーキングホリデーの実例や利用者の声は?
ふるさとワーキングホリデーには、雇用や地域活性化などのさまざまな経済効果や魅力があるとされています。しかし、これからふるさとワーキングホリデーへの参加を考えている人のなかには、実際の内容や利用者の感想が気になる人も多いでしょう。ここからは、ふるさとワーキングホリデーの実例と利用者の声を紹介します。
実例1.農家での栽培・収穫
ふるさとワーキングホリデーで実施されている内容のなかでも特にポピュラーなのが、地域の特産品である野菜や果物の栽培・収穫といった農家での仕事です。都会では味わえない自然との触れあいに加えて、普段の生活では見えにくい野菜や果物の生産過程を学べることから、参加者からも高い人気があります。
とあるほうれん草農家で初めて農作業を体験した参加者の学生からは、「わからないことや上手くいかないこともあったが、辛いとは一切感じなかった」という声があがっています。また、就職活動時のキャリアプランを考えるうえで、第一次産業のリアルを体験しておかないのはもったいないと感じたのだそうです。
実例2.農家とのつながりでケーキを考案
同じ農作業を体験した学生のなかには、ふるさとワーキングホリデーで知った受入先の地域や農家での経験を、仕事や学業で実際に活かしている人もいます。とあるみかん農家でのふるさとワーキングホリデーに参加した学生は、肥料撒きや袋掛けの手伝いをし、休日には選果場や観光スポットを見学したそうです。
そしてプログラム終了後は、アルバイト先の新メニューに受入先の地域の特産品であるみかんを使ったケーキを考案しました。ふるさとワーキングホリデーでの体験については「旅で新たなつながりが作れるという自信が持てた」という感想があがっています。受入先と参加者というつながりだけではなく、特産品の生産者と消費者というつながりを新たに創り出せるのも、ふるさとワーキングホリデーが注目される理由といえるでしょう。
実例3.地域の魅力発信サイトのライター
実施する地域の魅力を伝えるきっかけにもなり得るふるさとワーキングホリデーでは、参加する若者がライターやインタビュアーとなって受入先の地域や団体の情報を発信するサイトの運営に携わったという実例もありました。
実際にライターとしての仕事を担当した参加者からは、「読み手を意識したインタビュー構成・記事作成方法に苦戦した」という声があがっています。また、ライターの仕事をとおして、それまで気が付かなかった町のさまざまな特長に触れられ、都会では味わえない歴史の残る風景に感動したのだそうです。
実例4.地域活性化のためのイベントの開催
ふるさとワーキングホリデーでは、各地域の自然やコミュニティを活用したイベントのサポーターとして、参加者が活躍した実例もありました。例には、マリンスポーツや登山といった、アウトドアイベントのインストラクターやガイドの仕事があげられます。
実際にマリンスポーツツアーのインストラクターとして参加した若者からは、「豊かな自然のなかでのカヤックが気持ちいい」という感想を残しています。また「観光資源として押し出せば、より多くの人が来てくれるのではないか」といったように、その地域の将来を考えるきっかけにもなったようです。
実例5.販売・接客スタッフ
人と人とのつながりを感じられる販売・接客スタッフの仕事も、ふるさとワーキングホリデーでは高い人気を誇っています。実際に旅館の手伝いをした若者は、宴会・食事の準備や部屋の掃除などに苦戦しつつも、お客さんや受入先のスタッフとの交流を楽しんだようです。「旅行では味わえない体験だと思う」という感想とともに、進路の幅が広がったという声もあがっています。
ふるさとワーキングホリデーの基本的な参加方法と注意点
ここまで紹介した実例以外にも、受入先の地域や団体によってさまざまな仕事や交流を体験できるのが、ふるさとワーキングホリデーの魅力です。また、実際に参加した若者たちからも、たくさんのよい感想があがっています。そんなふるさとワーキングホリデーに参加するには、どうすればよいのでしょうか。ここからは、ふるさとワーキングホリデーの参加方法と注意点を解説していきます。
各自治体の合同説明会に参加する
ふるさとワーキングホリデーでは、それぞれの仕事や受入先の地域のことを参加者によく知ってもらうために、全国各地で説明会が行われています。実際に参加する際の詳しい注意点や、どのような受入先があるのかなどといった情報が得られるので、事前に参加しておくのがおすすめです。
説明会の実施状況や地域については「ふるさとワーキングホリデーポータルサイト」から検索できるため、自分が気になる地域で説明会が行われているかチェックしましょう。地域・自治体によっては、受入先の地域の人々と直接情報交換ができる場合もあります。
サイトに問い合わせ・登録する
ふるさとワーキングホリデーのポータルサイトのなかには、参加者が各サイトに問い合わせや登録をすることで、受入先の地域と団体の情報を入手できる場合もあります。気になるポータルサイトや受入先の地域・団体があれば、気軽に問い合わせをしてみましょう。
体験したい仕事・エリアなどを決定する
気になる受入先の募集要項をチェックしたら、体験したい仕事とエリアを決定しましょう。実施日までに体験に必要なものを揃え、体調を整えたうえで参加してください。1日のスケジュールは受入先によって異なるので、当日の朝は遅刻しないよう時間にゆとりを持って行動しましょう。
注意点①地域・受け入れ先によって具体的なプログラムに差が出やすい
ふるさとワーキングホリデーを実施している地域と団体は、同じ仕事でも地域・受入先によって具体的な活動内容や参加時の注意事項などが少しずつ異なります。そのため、実際にふるさとワーキングホリデーに参加する場合は、事前に受入先の募集要項をしっかり確認したうえで選ぶようにしましょう。
注意点②観光よりも就労がメインになる
ふるさとワーキングホリデーは、仕事をしながら受入先の地域での交流・体験を楽しむというコンセプトです。そのため、毎日のスケジュールは就労が中心であり、観光時よりも自由に散策する時間が少ない傾向にあります。
受入先での観光をメインに考えている人は、散策・観光の時間が取れるかを受入先のスケジュールで確認したうえで、参加するようにしましょう。
ふるさとワーキングホリデーが体験できるサイト一覧
ここからは、ふるさとワーキングホリデーの情報収集や体験ができるサイトを紹介します。これから参加を考えている人は、ぜひ参考にしてみてください。
ふるさとワーキングホリデーポータルサイト
「ふるさとワーキングホリデーポータルサイト」は、総務省が手掛けるふるさとワーキングホリデーの情報サイトです。全国各地の受入先や仕事の検索と申し込みはもちろん、説明会に関する情報や参加者の感想もチェックできます。ふるさとワーキングホリデーへの参加を考えている人に、ぜひチェックしてほしいサイトです。
おてつたび
「おてつたび」は、日本各地の豊かな魅力を知るきっかけとして誕生した、ふるさとワーキングホリデーの情報サイトです。農家や旅館、飲食店などのさまざまな仕事内容から検索が可能になっています。気になる受入先は「フォロー機能」を使えば、募集再開時に最新情報をいち早く入手できる点も魅力です。
RONIN BANK(ローニンバンク)
「RONIN BANK」は、「学び合いの場を共創する」をコンセプトとしたシェアリングエコノミーサービスです。農家や雪かき、害獣防止柵設置の手伝いなどといった、受入先の地域のさまざまな困りごとを応援します。サービスの趣旨はあくまで人助けをとおして学びを得ることなので、お金のやり取りを行わないことを基本ルールとしている点が特長です。
おきなわ移住の輪 ふるさとワーキングホリデー
「おきなわ移住の輪 ふるさとワーキングホリデー」は、沖縄県内でのふるさとワーキングホリデーに関する情報を提供しているサイトです。農漁業から福祉までさまざまな企業が参加しているので、沖縄ならではの生活環境のなかで新しい仕事体験ができるようになっています。また、体験期間中は専門の相談員や地域のナビゲーターを設置しているなど、初めての参加でも安心して楽しめるサポート体制を実現している点も魅力です。
タイミートラベル
「タイミートラベル」は、「働きながら第二の故郷を見つける」をコンセプトとした、ふるさとワークシェアリングサービスです。農業やレジャー施設、飲食店、旅館業務といった、さまざまな業種の仕事体験の情報が掲載されています。サイト内の各ページでは、受入先の雰囲気を写真でチェックできます。
ふるさとワーキングホリデーをとおして地域の魅力に触れてみよう!
ふるさとワーキングホリデーは、多種多様な仕事を体験しながら地域の人々との交流を楽しめます。そのため、観光や小旅行とはまた違った観点から各地域の魅力に触れられます。また、担い手不足に悩む事業者の手助けにもなるので、ふるさとワーキングホリデーは社会課題の解決につながる身近な方法として、さらに注目されていくことでしょう。ぜひ、ふるさとワーキングホリデーをとおして、日本各地の魅力を体験してみてください。
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