「クールシェア」とは
クールシェアとは夏の暑い日に家庭内や公共施設でエアコンの使い方を見直し、涼しさを共有する取り組み等のことをいいます。一人に一台エアコンを使うのではなく、一台のエアコンを複数人でシェアすることでエコや節約につながります。
例えば、家庭内では一つの部屋に家族みんなが集まり、地域では集会所などの場所に人々が集まり涼しさをシェアする…等がクールシェアの一例ですね。
またクールシェアは地球温暖化対策の一環として環境省が推奨しており、その概念が広がりつつあります。環境省が推奨するクールシェア空間としては地域における公共施設や商業施設、自治体の「避暑シェルター」や「外の木陰や水辺等の、自然が多く涼しい場所」が挙げられます。
注目されている背景とメリット
複数人で涼しさを共有する取り組みであるクールシェアは、環境問題などに注目が集まる中、脚光を浴びています。クールシェアが注目される背景として「エコ・節約・経済的効果」の3つの理由(メリット)が考えられます。
SDGsの達成につながる
SDGs達成のためにできることの例として節電が挙げられます。資源エネルギー庁の調査によると、夏の日中の消費電力の約58%はエアコンによるものとされています。クールシェアによって消費量の多いエアコンの電力を少しでも削減できるため、電力を作り出すために必要な化石燃料の使用の削減にもつながります。その結果、温室効果ガスの排出を削減することが可能になります。結果的にクールシェアはSDGsの達成につながると言えるでしょう。
SDGsの概念は世界的に浸透しており、環境問題や資源問題により今後さらに加速すると予想されるため、同時にクールシェアへの取り組みも加速する可能性がありますね。
光熱費を節約できる
クールシェアを行い節電することにより、家庭や企業の光熱費を節約できるというメリットもあります。クールシェアは環境にはもちろんお財布にも優しい取り組みと言えるでしょう。
ビジネス展開が期待できる
クールシェアにはSDGsの達成や節約というメリットがあるとはいえ、それらは我慢のイメージが強く長く続けるには難しい場面もあるでしょう。そこで期待したいのがクールシェアを利用したビジネス展開です。
クールシェアを利用して集客をしたり、シェア事業を展開したりと、クールシェアの概念によりビジネスの幅が広がる可能性があります。
ビジネス展開が実現できれば、経済的効果も期待できるため、エコや節電の継続がより現実的なものになりそうです。
【日本/海外】ビジネス展開した例を紹介
クールシェアが注目される理由として、クールシェアを利用したビジネス展開が期待できることを先ほど紹介しましたが、実際にどのような事例があるのでしょうか。
クールシェアという言葉自体にまだまだ馴染みがなく発展途上の取り組みですが、すでに事例も存在します。それらをヒントに今後もクールシェア市場の拡大が見込まれます。日本と海外の事例を見てみましょう。
日本のクールシェアの事例「傘シェア」
日本のクールシェアの事例として傘のシェアリングサービスがあります。株式会社Nature Innovation Groupが提供する「アイカサ」は、全国13都道府県1,000スポット以上に設置する傘のシェアリングサービスです。2020年からは環境省と連携し、熱中症警戒アラートが発令された際には傘を無料で提供する取り組みも行っており、クールシェアをサービスとして実現しています。
近年では男性でも日傘を利用する人が増えており日傘の需要は伸びると予想されるため、雨天だけではなく日差しが強い日も利用できるシェアサービスとして発展していくでしょう。
日本のクールシェアの事例「地域の取り組み」
東京では地域ぐるみでクールシェアに取り組んだ事例もあり、2018年にはクールシェア推進モデル事業として「クールシェア in 日本橋」が実施されました。「暑い夏だからこそ、クールシェアスポットで涼む」を合言葉に、地域全体で気軽に休める場所を提供しシェアする取り組みです。
「クールシェア in 日本橋」では、オフィスや飲食店などが併設される複合施設、郵便局、メガバンクなど39施設が参加し、気軽に涼める空間を提供しました。取り組みの中ではクールシェアと掛け合わせたキャンペーンやサービスが実施され、今後のクールシェア事業のモデルになったと言えるでしょう。
「クールシェア in 日本橋」のような取り組みは地域だけでなく、店舗単体や企業でも真似することができるのではないでしょうか。例えば、企業の自社ビルや高齢者施設などの普段は解放されていない場所をクールシェア空間として提供し、地域との交流を深めたり事業を知ってもらうきっかけづくりにもなり得ます。また、地方で特に問題になっている空き不動産の有効活用にも使えるかもしれません。
人と人が触れ合える場所にはそれだけビジネスチャンスも広がりそうですね。
海外の事例「涼しい商業施設でクールシェア」
海外の暑い地域では商業施設のフードコートなどに人が集まるということが挙げられます。この事例は家庭電力の節約のため人々がエアコンの効いた涼しい場所に自然と集まっているため、結果的にクールシェアにつながっているという事案です。
先ほどの地域の取り組みのように人が集まるというその集客力を利用しビジネス展開できる可能性もあります。筆者もタイやベトナムを旅行した際に、炎天下の中たくさんの人がスーパーのフードコートに集まっている光景をよく見かけました。涼しい場所を提供することで人が集まり結果的に他のニーズを満たすことができるのかもしれません。
今後のクールシェア市場はどうなる?
クールシェアの事例は存在するもののビジネスとしてはまだまだ発展途上です。現在の事例を元に、今後考えられるクールシェアビジネスとはどのようなものなのでしょうか。想定できるクールシェア市場を紹介します。
クールシェアリングサービス
既に実現している傘のシェアリングサービスのように、クールアイテムや設備のシェアリングサービスの提供が考えられます。例えば空調服やハンディファン、仮設クールスポットのシェアリングサービスです。街中やイベント会場などにスポットを設けたり、公園や広場にミストや噴水等を設置するなどの方法も可能ですね。
クールアイテムなどのシェアリングサービスでは、提供者は少ない初期費用でサービスを提供でき、利用者は格安でサービスを利用できるというメリットがありますので、今後の導入も増えていくのではないでしょうか。
クールシェアをアピールし集客
海外の事例を元にクールシェアビジネスを展開するならば、クールシェアをアピールし集客につなげる取り組みが考えられます。アジアを中心とした海外では涼しさを求めて自然とフードコートなどに人が集まりますが、ビジネスとしてクールシェアをアピールしているわけではありません。
逆に言うと日本でもクールシェアのメリットを上手くアピールできれば、今よりも集客できる可能性があるということです。フードコートだけではなく、図書館やカフェ、緑豊かな場所や水辺など、涼しさをシェアできる場所は多くあります。涼しさ×空間×サービスを実現した施設が提供できれば、そこに人が集まり新たな消費が促進され経済的メリットが加速します。
クールシェアを活用し、人も地球も笑顔になる未来を
エコや節電に加え、経済的なメリットをもたらすクールシェアを実現することで、人と地球双方にとって優しい環境になるのではないでしょうか。そのためには経済効果が見込める施策や商品を考案し、クールシェアを掲げたビジネス展開をする必要があります。新たなアイデアによるクールシェアが誕生し、人々が快適に過ごせる空間が実現する未来もそう遠くはないでしょう。
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