物流業界が直面している課題と現状の対策

まず、物流業界においてシェアリングエコノミーが推進された背景を見ていきましょう。物流業界は、恒常的なドライバー不足や効率化の遅れによって深刻な輸送力低下に直面しており、このまま進むと2030年には、営業用トラックなどで現在輸送している荷物の約36%が運べなくなる推計すら存在する状態と言われています。

ドライバー不足の深刻さが顕著ですね。他業種と比較して1~2割低い賃金水準や、約2割長い労働時間が敬遠されている原因として挙げられそうです。

2018年に成立した働き方改革関連法により、2024年4月からドライバーの時間外労働に年間960時間(月80時間)の上限規制が適用されます。ドライバーの過重労働防止のためには必要な規制ですが、ただでさえ働き手不足の物流業界にとっては大きな痛手となるのは間違いありません。一刻も早いDXなどによる物流業務の効率化が求められています。

倉庫の遊休スペースの活用方法

倉庫業界では、労働力不足と合わせて、遊休スペースの有効活用が急務となっています。荷主の多くは比較的長期の保管寄託契約を営業倉庫と結んでいるので、EC販売市場の拡大に伴い、一部のEC事業者が取り扱う商品の短期的な保管ニーズが増えていることに対応できない場面も出てきています。

また、大手総合商社が独自に作成したデータによると、5,800万㎡、およそ3.7兆円が効率化可能な潜在市場として広がっていると言われています。こういった状況を踏まえ、国土交通省は、2021年に倉庫業界の生産性向上のために倉庫シェアリングサービスを本格的に推進すると発表しました。

POINT

ECとは?

電子商取引を意味する「Electronic Commerce」の略。ネットショップやネット通販など、インターネット上でモノやサービスを売買すること全般を指す。

対策としての物流ロボット

労働力不足解消や生産性を向上するための一つの手段として、物流ロボットが挙げられます。物流業務のピッキングや仕分けといった単純業務の全自動化だけでなく、人とロボットが共に働きそれぞれの特性を活かしながら仕事をしていく協働が必要になってきます。

物流シェアリングを推進・実現するために必要なことは?

効率化の取り組みが急務となっている物流業界ですが、更なる推進を図るため、まず新たなテクノロジーの活用は欠かせません。

先ほども言及した物流ロボットによるオペレーションの汎⽤化がポイントとなります。テクノロジー企業、新事業への支援・補助も同時並行で進めていく必要があるでしょう。 

共同の社会的サプライチェーンの確立

加えて求められるのは、社会的サプライチェーンの最適化と標準化です。いくらシェアリングの仕組みや技術が普及しても、バラバラのサービスが乱立してしまうと、結果的に業界全体の効率化は難しくなります。例えば同じ受荷主を持つライバルメーカー同士であっても、同じ枠組みの共通プラットフォームを使う必要があります。

荷主となるメーカー各社と受荷主、そして物流会社を巻き込んだ共同の取り組みを行うために欠かせないのは、利害関係を乗り越えることです。販売においては競争でも、物流は共同で行う理念を持ちながら、物流各社が⾃社の競争領域と⾮競争領域を⾒極めることが求められるでしょう。 

POINT

社会的サプライチェーンとは?

製品の原材料・部品の調達から販売に至るまでの全体の一連の流れ。

すでに実施されている取り組み事例を紹介

ここで現在稼働している物流シェアリングの事例を見ていきます。 

加工食品メーカーの取り組み

1つ目が、味の素、ハウス食品グループ本社、カゴメ、日清製粉ウェルナ、日清オイリオグループ の食品メーカーが参加する食品企業物流プラットフォーム「F-LINE」です。荷主の会社の食品・飲料商品を預かり、温度帯だけではなく商品ごとの物流特性を考慮し、全国で最適な物流ネットワークを構築。同一カテゴリーの商品を納品先ごとに積み合わせて、まとめて配送することにより配送の効率化と環境負荷低減も実現しています。

加えて、加工食品業界では「小ロット納品」「検品の頻度が多い」「多様な製品サイズ」などの課題が多い状況ですよね?


それらの解決の一助として、納品伝票の電子化、外装サイズや外装表示の標準化を進めることで、物流業界の協業体制の構築にも積極的に取り組んでいます。 

トラック予約受付・バース管理システム

2つ目に挙げるのが、受荷主となる多くの卸企業やIT企業が開発をしているトラック予約受付・バース管理システムです。

トラックの滞留はドライバーの長時間労働が起こる原因の一つでもあり、待機時間は最長で4~5時間に及ぶこともあります。休憩時間として扱われるケースや、結果的に生じた残業代が支払われないケースなども発生しており、ドライバー不足に拍車をかけている状況です。

同時に、トラックの路上待機による事故の危険性や、近隣や環境への配慮も考える必要があります。 

POINT

トラック予約受付・バース管理システムとは?

倉庫のバース(荷下ろし場)での荷待ちを解消するため、入荷先や出荷先から物流センター・工場におけるトラックバースの予約を受け付け、管理するシステムのこと。

シェアリングが実現できるプラットフォーム4選(2023年4月現在)

上記のようなシェアリングの事例がある中で、それを下支えするためのプラットフォームも充実しています。ここでは現在シェアリングのために用意されているプラットフォームを紹介します。 

ハコベル

ハコベルは、セイノーホールディングス株式会社とラクスル株式会社が運営する物流シェアリングプラットフォームです。全国の運送会社の非稼働時間や個人ドライバーを有効活用し、ネットワーキング化。ラストワンマイルから新幹線輸送まで、幅広いニーズに合わせたマッチングサービスを提供しています。

また、一般貨物向け配車管理システムでは、配車のデジタル化による、業務自動化・情報の一元化を実現。物流データの可視化、業務コスト削減、輸配送コスト削減につながっています。 

POINT

ラストワンマイルとは?

エンドユーザーに物・サービスが到達する物流の最後の区間のこと。

souco(ソウコ)

soucoは、株式会社soucoが運営するB to Bでの倉庫シェアリングを中心とした物流サービスプラットフォームです。

全国1,800拠点以上の倉庫ネットワークの中から、荷物の保管先倉庫を素早く確保。段ボール、パレット、カゴ台車の荷物なら、荷物一個・一日単位で利用できる分かりやすい料金体系が特徴です。小売やアパレル、輸入業など、さまざまな業種・業態の荷物保管に対応可能となっています。 

MOVO(ムーボ)

MOVOは、株式会社Hacobuが運営する、物流情報プラットフォーム。「運ぶを最適化する」をミッションに、車両待機を解消できるトラック予約受付サービス、車両管理に係るコストを削減できる動態管理サービスなどを提供しています。

メーカーや小売、3PLなど、業界を問わず利用されており、公式HPでは、課題や業種、製品ごとに似た事例を探すことができます。自社の状況に近い事例を探したい場合は参考にするとよいでしょう。 

POINT

3PLとは?

物流部門を第三者企業に委託する業務形態を表す「サードパーティー・ロジスティクス」の略。

はぴロジ

はぴロジは、株式会社はぴロジが運営する、EC事業者と物流事業者をつなぐ流通インフラプラットフォームです。

提供しているクラウドシステム「logiec」は、さまざまなカート・モール・受注管理システムと在庫管理システムを媒介し、システム連携コストを削減し、 流通の選択肢を広げます。データ取込みから配送まで、あらゆる物流領域をサポートする全国規模のインフラを構築しており、更なる拡大を続けています。 

物流シェアリングの普及がもたらす影響とは?

これまで、物流シェアリングサービスについて、背景や取り組み事例を紹介してきました。今後、業界業種を問わず、複数社でのプロジェクトが加速することでしょう。

上記に紹介したように、物流インフラを効率化するサービスやプラットフォームはいくつも登場しています。今後、物流会社全体を巻き込んだ共同の取り組みを行うことで、今直面している課題の解決により近づくのは間違いありません。 

複数の物流会社共同で取り組む事例

2020年には、北海道札幌市において、J R貨物、大和ハウス工業、大和物流、フレームワークス、Hacobuの5社の協働プロジェクトがスタートしました。内容としては、北海道最大の物流施設となるマルチテナント型物流施設「DPL札幌レールゲート」を建設。全国の鉄道網と物流施設などの物理的なインフラを効率的に活用することで、持続可能な物流・ネットワークの構築を目指しています。

このように、各社のシェアリングサービスを単発で推進するよりも、複数社共同で取り組むことで生み出せるインパクトは非常に大きなものになりますね!

ロジスティクスと社会の関わり

近い将来、どれだけテクノロジーが発達しても、物流そのものが消滅する可能性は低いでしょう。例えば音楽のストリーミング配信は、以前はCD購入しか手段がなかったものの、今は音楽情報の移動に媒体は必要ありません。しかし物流は、生産するモノと場所、それらを必要とする人たちを媒介するために欠かせない社会インフラです。

人材不足を始めとした、物流業界の課題を解決するのは一朝一夕では不可能です。まず必要なのは、社会的サプライチェーンの最適化・標準化。そのためにも物流業界全体で手を取り合って取り組んでいく必要があるでしょう。

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