シェアリングシティとは?
POINT
シェアリングシティとは?
さまざまなシェアを街のインフラとして浸透させることで、暮らしを豊かにしていくという概念。場所や乗り物、サービス、モノをシェアすることで、誰もが暮らしやすい街づくりや経済の発展につなげる試み。
近年、新しいものを購入するのではなく、今すでに持っているものを有効活用する考え方が広がりつつあり、個人が所有するあらゆるものをシェアするサービスに注目が集まっています。
また都市部、地方問わず公共サービスが不足しており、サービスを必要としている全ての人に届かないといった問題を抱えています。日本では少子高齢化や地方の人口減少、財源難などの問題を抱えていますが、これらの問題を全て解決するには公共サービス以外の力も必要です。
そこでシェアリングエコノミーを導入することで、公共サービスでは解決しきれない問題を共助で補い、同時に自治体が抱える問題の解決を図ります。このような試みをシェアリングシティと呼び、人々の暮らしをより豊かにする狙いがあります。
コンパクトシティ・スマートシティとの違い
シェアリングシティと類似する言葉にコンパクトシティやスマートシティがあります。
それぞれ意味は異なりますが、最終目的は「人々のより豊かな暮らし」を追求することです。
コンパクトシティは、郊外に居住地が集中するドーナツ化現象を抑え、できる限り生活圏をコンパクトにした街のことを指します。
一方、スマートシティはICTの最新技術を活用し、自治体の機能やサービスを向上させ、あらゆる課題の解決を目的としています。急速な少子高齢化、頻発する災害など、日本が抱える課題は多く存在し、それらの課題を日本が誇る最新テクノロジーで補うという試みです。
それぞれに特長があるので、これら3つの考え方を組み合わせることで、日本が抱える問題の解決につながるかもしれませんね!
海外のシェアリングシティ実例
少子高齢化や地方の人口減少など公共サービスだけでは補えない課題を抱える日本ですが、シェアリングシティが広く浸透しているとはまだ言えない状況です。日本においてシェアリングシティの概念は発展途上であり、海外の事例を参考にしながら実現に向けて動く必要があります。
では、海外で実現しているシェアリングシティとはどのようなものなのでしょうか。実例を見てみましょう。
①オランダ:アムステルダム
「アムステルダム・シェアリングシティ」を宣言し、さまざまなシェアサービスを街全体で推進しています。例えば「近所の人と食事をシェア」「スキルをシェア」「育児や介護をシェア」といった、シェアリングサービスが存在します。
②韓国:ソウル
ソウルは、アジアのシェアリングシティ先進都市と言っても過言ではないほど、シェアリングサービスが充実しています。行政がシェアリングシティを促進し、民間企業や地域全体でシェアの概念が浸透しているのです。
サービスとしては「民泊」「子ども用品のシェア」「オフィススペースのシェア」などが挙げられます。
③イタリア:ミラノ
ミラノでは、宿泊施設不足や交通渋滞といった課題を解決するため、シェアリングシティに向けた取り組みが始まっています。2015年に行われたミラノ万博では、カーシェアリングサービスやシェアリングサイクルサービスが活用され、シェアリングシティの概念に注目が集まりました。また、シェアリングエコノミーをテーマにした欧州最大規模のイベントが開催されるなど、イタリアミラノでの取り組みは国内外から高い注目を集めているのです。
【活用方法】日本の課題を「シェア」で解決
シェアリングシティ発展途上の日本ですが、実際に日本でシェアリングシティが実現するとどのように活用できるのでしょうか。
ここからは日本が抱える課題解決を目的としたシェアリングサービスの活用方法を見ていきます。
防災の課題解決
災害大国である日本がシェアリングエコノミーを取り入れることで防災の課題解決につながるでしょう。
想定される取り組みとしては、災害時に避難所として活用できるシェアハウスが挙げられます。災害時には支援物資や設備などのニーズが高まります。それらに対応するために平時にはシェアハウスとして利用し、災害時には物資集積・避難所として活用するという試みです。
またこうすることで地方の空き物件の有効活用にもつながるでしょう。
コミュニティの強化
少子高齢化や核家族化が加速し、地域や世代間でのコミュニティが希薄になる中、シェアリングエコノミーを通したコミュニティの強化が期待できます。
例えばスペースのシェアにより世代間のコミュニティが形成されます。スペースやモノをシェアすることで人々の交流が生まれ、地域や世代を跨いだ「助け合い」が可能になります。
モビリティサービスの強化
代表的なシェアリングサービスの一つにカーシェアをはじめとする移動手段のシェアがあります。移動手段のシェアにより地域の足を確保し、公共サービスだけでは補えない移動手段の維持が可能です。
日本の大都市では朝の通勤ラッシュなどで人々が一度に移動することで、渋滞が起きる、駅で多くの人が混在するといった問題を抱えています。移動手段のシェアサービス導入により、このような課題解決にもつながるでしょう。
また公共交通機関が少ない地域での観光客の移動や、災害時の一時的な移動手段としてシェアリングサービスが活躍する可能性も考えられます。
モビリティサービスの強化は、移動手段のシェアによる二酸化炭素排出量の削減するという形で、近年よく耳にすることになったSDGsの達成にも貢献できます。
働き方の多様化
シェアリングエコノミーではスキルやノウハウをシェアするという考え方もあります。
例えば、クラウドソーシングを通じて知識や技術、経験をシェアし、結果的に人材と企業がマッチングすることで就労の課題を解決できます。
また距離を超えて働くという概念も生まれるでしょう。
地方に住んでいる方の労働参加率や所得の向上のため、できる限り多くの人が働ける環境を整える取り組みです。
さらにVRに代表されるメタバースを活用することで、仮想空間をシェアするという働き方も現れるでしょう。社内会議や研修を行えば、Zoomなどのオンライン会議アプリでは不十分だった「人とのリアルな距離感」や「対面して会話する雰囲気」をバーチャルで再現できます。
シェアリングシティ実現による生活の変化~1日のスケジュール例~
シェアリングシティ実現によって現代の日本が抱えるさまざまな問題の解決が期待できますが、実際の生活にはどのような変化が生まれるのでしょうか。働き盛りのビジネスマンをモデルに1日のスケジュール例を見ながら、生活の変化を見ていきましょう。
【スケジュール】
08:00 |
起床 |
09:30 |
シェアサイクルサービスを利用し出勤 |
10:00 |
シェアオフィスにて勤務 |
12:00 |
食事のシェアサービスを利用し食費を節約 |
13:00 |
メタバースオフィスにて会議 |
18:00 |
クラウドソーシングを使い副業 |
20:00 |
シェアオフィスの交流会で食事をしながら仲間と情報交換 |
23:00 |
帰宅・就寝 |
現在では会社への移動は通勤電車が多く使われますが、シェアリングシティが実現するとカーシェアやシェアサイクルによる通勤が可能となります。そもそもオフィスシェアが一般的になれば、自宅近くのシェアオフィスへの出勤が主流となるでしょう。
メタバースが普及するとタイムカードを押す代わりに、VRゴーグルをかけるということが仕事のスタートになるかもしれません。
そしてランチタイムは食事シェアサービスを利用し食費を節約。本業が終わればクラウドソーシングを通じて本業スキルを活かした副業が可能です。1日の最後のスケジュールには仕事場として利用しているシェアオフィスでの交流会です。人脈構築をかねて世代を超えた交流も生まれ、新しい知識や友人を得る場にもなるかもしれません。
個人が所有するモノ、場所、スキル、ノウハウなどを社会全体でシェアすることで、人々の暮らしがより豊かになりますね!
シェアリングシティの実現で暮らしやすい街に
日本ではまだ発展途上のシェアリングシティの概念。しかし世界ではシェアリングシティ実現に向け数々の都市がシェアリングサービス推進に向けた取り組みをしています。
シェアリングシティの実現は現代の日本が抱える多くの問題を解決する糸口になり、人々がより豊かに暮らせるきっかけとなります。シェアリングサービスの活用はもちろん、個人でもできる小さなシェアを始めてはいかがでしょうか。
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